WBCに向け、侍ジャパンの選手たちが調整する期間は決して長いとは言えない。投手陣が頭を悩ませるのはWBC使用球の扱いだ。
【写真】「松井秀喜級の素材」と称賛の声があがる巨人の選手がこちら
スポーツ紙記者は、こう語る。
「NPB公式球と『全く別の球』と話す投手が少なくない。メジャーでも使用されているWBC使用球は滑りやすく、縫い目も高い。NPB使用球よりも球が大きく、同じ感覚で投げると直球が指に掛からずに球速が落ち、浮いてしまう。変化球も曲がりが小さく、思い描いた軌道にならない。宮崎強化合宿では、WBC使用球の扱いに苦しむ投手たちが、ダルビッシュに相談する姿が見られました」
ダルビッシュ有(パドレス)、田中将大(楽天)、かつてメジャーで活躍した野茂英雄、黒田博樹をはじめとして日本人投手はメジャーで活躍しているイメージは強いが、決して全員が成功しているわけではない。大きな壁として立ちはだかるのが、日米のボールの違いだ。日本ではウイニングショットとして使っていた球種が、メジャー使用球ではうまく操れない。試行錯誤を繰り返して肩、肘に大きな負担を掛けて故障するケースも珍しくなかった。厄介なのはボールの個体差が大きいことだ。今回の侍ジャパンでは、投手たちが数種類のWBC使用球を使ってブルペンで投げ込んでいる。
WBC使用球の対応を巡り、明暗が分かれる形になっている。最も心配なのは、球界を代表するストッパーで通算197セーブをマークしている松井裕樹(楽天)だ。三振奪取能力が高い左腕だが、スライダー、チェンジアップの制球で苦しみ、本来の投球ができていない。2月14日の練習試合・日本ハム戦で1回持たず5安打6失点の大乱調。カウントを悪くし、球威が落ちた直球で痛打を浴びた。侍ジャパンの合宿で調整を続け、2月26日のソフトバンク戦では1回無失点。だが、投球内容は安心できるものではない。1死から正木智也、ガルビスに連続四球を与えて一、二塁のピンチを招き、嶺井博希にも初球から3球連続ボールと制球が定まらない。4球目以降に嶺井がボール球に手を出したため、凡打に仕留めたが、大量失点と紙一重の投球だった。