「嫌いな夏休みの宿題」筆頭の読書感想文。自分も苦戦した難題に子どもをどう向かわせるか。頭を抱える親たちに代わって、全国で最高峰の賞に輝いた親子に聞いた。「面白かったで終わらせない読書感想文」になる親子の日常とは。
【画像】「画用紙3枚」でスラスラ書ける! 作家が教える読書感想文テク
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感想文の書き出しはこうだ。
「言葉は生きている。いや、生かすことができるんだ。万葉の言の葉が、そっとささやいた」
青少年読書感想文全国コンクール小学校高学年の部で、最高峰となる内閣総理大臣賞を受賞した山口県田布施町立田布施西小学校6年の倉橋和希さん(12)が題材に選んだ本は『中西進の万葉みらい塾 はじめての「万葉集」』(朝日新聞出版)。万葉集研究の第一人者であり、新元号「令和」の考案者とされる中西進さんが、全国の小中学校で行った出前講座を収録したもので、子どもたちと会話しながら和歌を読み解いていく一冊だ。
と言っても、そんな当たり障りのない本の解説やあらすじは和希さんの文章には出てこない。「『景色にも気持ちがある』なんて考えたこともなかった」と発見し、著者の言葉に励まされながら自らの考えをいきいきと掘り下げていく。
「短い文章の中でも万葉集のエッセンスを掴み、自身の体験を通して、見た景色について書いてくれたところが素晴らしい」
と、中西さんは言う。
多くの小中学校で取り組まれている読書感想文は、子どもだけでなく親にとっても気が重い宿題の一つだ。どんな本を選ぶのか。「面白かった」の一言で終わってしまいがちな子どもの心の内を、どう引き出して言葉にするか。根を詰めすぎて本嫌いにしてしまうのも避けたい。
和希さんの母・福代さん(45)に聞くと、どうもそのカギは日常にありそうだ。和希さんが『万葉みらい塾』を選んだのは、福代さんの薦めがきっかけ。
「もともと学校で百人一首に触れていて、新元号の発表があってから九州の博物館に万葉集の展示を見に行きました。そこで和歌に興味を持っていたので、子どもでもわかりやすい本を探し、自分でも読んでみて、これならと思いました」(福代さん)