それが功を奏し、和希さんは気になるページに付箋を貼りながら何度も読み返し、感想文を書き上げた。
「うちの子は薦めても読まない!」という親もいるだろうが、宿題だけ口うるさく介入しているわけではない。倉橋家では互いに本を紹介し合うのが日常だ。
「随分前ですが『お母さん取扱説明書』は、息子が見つけてきて面白いよと薦められましたね(笑)。本の感想もリビングで話しますし、わからないことも家族で調べることが多いです」
つい先日も、同居する祖父(72)が図書館で借りてきた本を手に「この漢字なんて読むんだろう」と口にした。家族みんなで辞書をひき、電子辞書で調べて「抽斗=ひきだし」という読み方にたどり着いたという。
両親も祖父も本が好き。その影響は大きいだろう。3世代同居の一家にとって、共通の話題がゲームやテレビではなく本だったのは自然なことだった。
和希さんの夢は「人の役に立つロボットを作ること」。普段は子ども向け科学雑誌や科学小説を愛読する。地域のロボット教室では、手が不自由な祖母のためにリハビリ器具を作った。
「今は吉野彰さんのリチウムイオン電池についてもっと知りたくて、家族で調べています」
と、和希さん。本から現実の世界へ、好奇心が広がっている。子ども向けの講座を行う中西さんも、勉強に向かわせる方法についてこうアドバイスする。
「まずは正面から顔を見て、十分に向き合うことです。子どもにとっては正面だけが大事なので、斜めではダメ。そしていつも鬱陶しくしてはいけません。勉強となると萎縮してしまうので『じゃあ遊ぼうか』と誘って。絶対の信頼感がある人にはちゃんと目を向けてきますよ」
決戦の夏休みまで、まだ時間はある。今できることは、親子の日常に隠れているのだ。(AERAdot.編集部・金城珠代)
※AERA 2020年2月24日号