放送法の「政治的公平性」の解釈をめぐる総務省作成の内部文書には、官邸側と総務省側とのやりとりが克明に記されており、当時の首相補佐官が総務省幹部に対し、“脅し文句”とも取れるような文言を突きつけている記述もある。総務省はすべて行政文書だと認めたが、「捏造(ねつぞう)」と批判した当時総務相の高市早苗氏は見方を変えていない。
【総務省内部文書】高市総務相(当時)や礒崎首相補佐官(同)らの生々しいやりとりが書かれた文書はこちら
総務省の内部文書は、立憲民主党の小西洋之・参院議員が3月2日に記者会見して公表した。放送法第4条「政治的公平性」の解釈について、2014~15年に安倍政権下の官邸側から総務省に対し、追加の解釈を求めてやりとりしていた様子などが記録されている。A4サイズで80枚ほどある。
3日の参院予算委員会で質問に立った小西氏は、
「個別の番組に圧力をかける目的で法解釈を変えた」
と指摘した。
従来、放送法の「政治的公平性」について総務省は、「一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する」との見解を示していた。
内部文書では、こうした見解について、当時の礒崎陽輔首相補佐官が、
「全体で見るときの基準が不透明」
「一つの番組で明らかにおかしいと判断できる極端な場合はどうか」
などと疑問を呈し、解釈の追加ができないか総務省に問いただしている生々しい様子などが書かれている。
ほかにも、当時の安倍晋三首相や高市早苗総務相、首相秘書官ら官邸側幹部、総務省幹部らの発言も書かれている。
2015年2月13日、総務省幹部から説明を受けた高市氏は、
「そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある? どの番組も『極端』な印象」
「関西の朝日放送は維新一色」
「苦しくない(国会)答弁の形にするか、それとも民放相手に徹底抗戦するか。TBSとテレビ朝日よね」
などと話し、
「官邸には『総務大臣は準備をしておきます』と伝えて下さい」
と国会答弁する用意があることを官邸側に伝えるよう総務省幹部に話している。