四コマ漫画を考える子どもたち。どんなストーリーが産まれるかな?
四コマ漫画を考える子どもたち。どんなストーリーが産まれるかな?
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発表は記者会見風に。マイクを向けられてもしっかり話せます
発表は記者会見風に。マイクを向けられてもしっかり話せます

 前回の記事にあるように、たくらみ(小学生)クラスでは年明けから、通常のプロジェクト学習とは異なる特別プログラムを実施中です。

【写真】作品の発表は記者会見風に!

 普段、子どもたちの学校生活や放課後が、あらかじめ目的が設定された活動に偏りすぎているように感じていたため、今回はあえて趣向を変えた取り組みに挑戦しています。

 プログラムではまずはじめに、「なんとなく気になるもの・ことを感じながら歩きまわってみよう」を合言葉にみんなで下鴨神社の近辺を探索しました。

 そのなかで私たちは、何かすごい発見をしなければと気負わずに、自分が気になったもの・ことに素直に反応していると思いがけない出会いがあることを実感しました。

 発見したもの・ことを模造紙にまとめる作業では、同じようなエリアを探索したにもかかわらず、低学年クラスと中学年クラスの発見の違いが浮き彫りになり興味深かったです。

 プログラムの後半を迎えるにあたり、私は子どもたちに新たな課題を提示しました。

「発見の中からいま自分が一番気になっているもの・ことを選んで、どこがどんな風に不思議か五七五にまとめてみよか」

 それを聞いて、子どもたちは「よしきた」とばかりに早速、指を折りながらブツブツ言い始めます。

 中には不安げな表情を見せる子もいたので、まずは頭の中に浮かんだイメージを単語にして、あれこれ書き出してみることをすすめます。

 最初から完成形を求めるのではなく、言葉を組み合わせるなかで五七五が出来上がっていく感覚を味わってもらうためです。

 時間がおしていたこともあり、作業にかけられる時間はそれほど多くありません。私は子どもたちの様子を見ながら、必要に応じて個別にフォローしていきます。

 たくらみキッズは高い集中力を見せ、なんとか全員が無事に授業時間内に作品を仕上げることができました。

 彼らが作った五七五の一部をご紹介したいと思います。

◯かわだらけ いったいなんこ あるのかな

 小2のTくんは下鴨神社の参道で何本もの小川を横切ったことを五七五にまとめました。あれらの小川が実は一本でつながっているのではという仮説も生まれました。

◯はてなむし 松ぼっくりから こんにちは

 最上級生である小4のKくんは、発見したもの・ことを模造紙に表す際に、松ぼっくりから突然現れた謎の虫の正体を解き明かしたいとのこと。

◯はしのまつ どこからたねが やってきた

 小1のTくんは河合橋の欄干のすき間からニョキッと生えている不思議な松がとても気になるようです。

 この日は大勢の見学者がいらっしゃいましたが、たくらみキッズがはにかみながらも堂々と五七五を詠む姿に頼もしさを感じました。

 特別プログラムの最終回となる3日目。これまでの授業で子どもたちがそれぞれ最も気になったもの・ことが不思議の種として出そろいました。

 私は特別プログラムの最後に、これらの不思議の種をかけ合わせて4コマ漫画を作るという課題を提示することにしました。一見関係ないものを掛け合わせることで新しいアイデアが生まれる体験を実感してもらうのがねらいです。

 最初、彼らは一瞬ぽかんとした表情を浮かべましたが、見本をもとに作り方をレクチャーすると、なんとなくポイントをつかんだようです。

「そんなバカな!」と思わせるような発見や発明を考えてみようと促すと、子どもたちはワクワクした表情でペアになって作業に取り掛かりました。

 たくらみキッズは活発にお互いのアイデアを交換し、4コマ漫画のストーリーを決めていきます。

 低学年クラスと中学年クラスの合同授業はこの特別プログラムが初めてでしたが、全体の一体感を強く感じました。

 作品の発表は記者会見風に行うことにしました。私がインタビュアーになりきって会見を進行する様子を子どもたちが面白がりながら眺めています。

 真っ先に手を挙げた低学年ペアは、それぞれの不思議の種である「橋から生えた松」と「川」を題材に4コマ漫画のストーリーを発表してくれました。

 川が大雨で極端に増水して、欄干のすき間に松の種がたまたま挟まったというのが彼らの考えた「発見」です。

 このまま放置しておくと、松がどんどん成長して橋を破壊し、最終的に地域住民は松の木を橋代わりに利用しないといけなくなるとしっかりオチをつけてくれました。

 会場からは驚きと笑いが入り交じった反応が返ってきます。

 どちらかといえば発表に苦手意識を抱く2人がいきいきと語る姿に私も大変驚きました。

 以降の組も愉快なストーリーを発表し、大盛り上がりのうちに授業は終了しました。

 プログラム全体を振り返ると、何となく気になることを丁寧に拾い、とりあえず動き続けるなかで、目的がぼんやり見えてくる感覚を子どもたちに味わってもらうことはできたように思います。

 しかし、たった一回の経験では彼らの認識が変容するまでには至らないでしょう。探究堂では来年度もこの「目的を見いだす学び」に積極的に取り組んでいきたいと考えています。

AERAオンライン限定記事

○山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。