蜜璃の入浴シーンでは、彼女の常人を超える「特殊な筋肉」は目に見えない。しかし、この柔らかそうな身体に尋常ではないパワーが秘められていることが、バトルシーンの戦闘方法を見て理解できる仕組みになっているのだ。
■もう1つの重要な「入浴シーン」
そして、さらに注目しなくてはならないのは、炭治郎と禰豆子、そして蜜璃以外にも、入浴シーンが描かれた人物がいることだ。炭治郎は刀鍛冶の里の温泉で、不死川玄弥と再会している。
「久しぶり!!元気でやってた!?」(竈門炭治郎/12巻・第101話「内緒話」)
「話しかけんじゃねぇ!!」(不死川玄弥/12巻・第101話「内緒話」)
これまでに炭治郎が玄弥と顔を合わせたのは、鬼殺隊入隊試験「最終選別」の時、そして、那田蜘蛛山の戦いの直後に蝶屋敷(注:胡蝶しのぶの邸宅で、病院のような施設)の廊下で彼とぶつかる場面である。
「短期間ですごく体格に恵まれている…」「でも何だろう 匂いが 何だろう…」(竈門炭治郎/7巻・第53話「君は」)
この体格の変化、匂いの描写は、「刀鍛冶の里編」の中で回収される重要な伏線になっているのだ。
■入浴シーンで“肉体”を見せる意味
最終選別では(2巻)ほぼ同じ身長だった玄弥と炭治郎だが、蝶屋敷のシーンでは(7巻)、炭治郎の背丈のところに玄弥の肩が位置している。ここで玄弥の身長がかなり伸びたことがわかった。
そして、刀鍛冶の里での入浴時に(12巻)、玄弥の素肌がさらされることによって、彼の肉体に無数の大きな傷があること、さらに初登場時からは予想もできないくらいに筋肉がついていることが、読者・視聴者に示されるかたちになる。
普段、玄弥の肉体は隊服で隠されている。風柱・不死川実弥と音柱・宇髄天元は露出が高い隊服であるが、彼らはいずれも「柱」であり、他の隊士とは違う目立つ隊服デザインであることは自然である。また、肉体の特徴と戦闘特性が関係していることからも違和感はない。一方で、柱でもない一隊士である玄弥が、露出の多い隊服を着ることは不自然である。以上のことから考えても、玄弥が自然に肌・筋肉を見せるためには、入浴シーンが最適であったことがわかる。
この入浴場面で玄弥が見せる「肉体の急激な変化」は、戦闘中に明らかになる「玄弥の特殊能力」と密接に関わってくるからだ。