【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。
『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編では、以前から読者の間で物議をかもしていた場面がある。恋柱・甘露寺蜜璃の「入浴シーン」だ。肌もあらわに温泉に入る蜜璃の登場シーンが、不必要な“お色気”ではないかと批判されたことがあった。だが実は、刀鍛冶の里に「温泉」があることには、重大な意味がある。蜜璃たちが温泉で“肉体”を見せることにも必然性があるのだ。その理由を考察する。
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■刀鍛冶の里の「温泉」
遊郭の鬼との戦闘後、炭治郎が鋼鐵塚蛍(はがねづか・ほたる)に鍛刀を依頼するため、刀鍛冶の里に出向くと、この隠れ里には温泉の匂いが立ちこめていた。
「すごい建物ですね!! しかもこの匂い 近くに温泉があるようだ」(竈門炭治郎/12巻・第100話「いざ行け里へ!!」)
常人よりも嗅覚が優れている炭治郎は「温泉の匂いが強いなぁ」「鼻が利きにくい」と困った顔をした。この里の温泉には、切り傷・貧血・筋肉痛(鼻炎、失恋の痛み)などの薬効があり、鬼殺隊の隊士や刀鍛冶たちに重宝されている。しかしそれでも、温泉の場面が、恋柱・甘露寺蜜璃の入浴シーンから始まったことで、「お色気」シュチュエーションとして読み取られてしまうことも少なくなかった。
それはバトル系少年マンガにおける女性登場人物に、「お色気」担当のキャラクターが多かったことも関係しているだろう。少年マンガの女性キャラクターにはいくつかの類型が見られる。たとえば、(1)男性キャラに守られるか弱い女性、(2)男性より戦闘力が劣る女性、(3)主人公をめぐって、ヒロインの恋のライバルになる女性、(4)主人公の指導者・育成者の美女(老婆などの例もある)、(5)色気や美貌を戦闘に利用する女性、などがそれにあたる。「戦う女性」キャラの場合は、男まさり、生意気、男を手玉に取るなどステレオタイプな人物もいる。