「これまでは全科目で取りこぼしのない子が評価される傾向がありましたが、調査書の活用法を自由にすることで、一人ひとりの子どもが得意なこと、頑張ってきたことをきちんと評価できるようにしたい」(県教委事務局、倉本享宏(みちひろ)さん)
内申書が過度に生徒を萎縮させないよう、記載する項目も氏名・性別、学習の記録の三つに絞り込む。不登校の子が不利にならないよう欠席日数の記載はなくす。学校側が合否判定にどうしてもその情報を使いたい場合は理由を明示するよう求めるという。さらにこれまで中学校の教員が記載していた部活や特別活動に関する事項は生徒自身が自己PR書にまとめる。
「大学進学や就職でも自己PRは大事になる。中学校には『高校入試のため』ではなく日常的な教育活動の中で力をつけさせる指導をしてほしい」(同)
地元では「評価軸が多様化するのは大歓迎」(学習塾「進学空間Move」宮脇慎也塾長)という声もある一方で、「推薦入試をなくしてほしくない」「実施時期は急がないでほしい」など受け止めはさまざまだ。
「教育と選抜」を専門とする東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授は、入試制度を変えることで主体的な子どもを育てようなどと意図を込めすぎることに注意を促す。主体的であることを演じる非主体的な子どもを「親も先生も塾もこぞってサポートするという矛盾も生まれかねない」と。だが、今回の改革案はポジティブに評価する。
「自己PRも一律に主体性を押し付けるのではなく、生徒自身が書きたいことを書けるようにという配慮が見られる。選抜方法も各学校によってバリエーションがつけられるなど柔軟性がある」(中村教授)
広島県では現在パブリックコメントを受け付け中で、年末までには最終案を出す予定。調査書、入試を見直す動きが全国に広がるか注目だ。(編集部・石臥薫子)
※AERA 2019年10月14日号より抜粋
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