とってもシンプルで簡単なレシピではありますが、小さなお子さんですから、想定外のことも起こります。

 レッスン中、最初に卵を割り入れる際に、器から半分こぼしてしまった子がいました。今にも泣き出しそうな顔をしています。こんなとき、「あーあ」とか、「ダメじゃない」なんて言葉や態度は絶対にNG。

「卵、元気一杯で逃げちゃったね!」

 笑顔でそう声をかけたら、さっきまで泣き出しそうだった子どもの顔も、パッと明るくなります。

「まだボウルに卵が半分残ってるね。これそのまま使う?それとも新しく割る?」

 するとその子は「そのまま使う」と言います。

 レシピ通りに作るなら、もう一度卵を割りなおしたほうが簡単です。でも、せっかく子どもが「そのまま使う」と言っているなら、その気持ちを尊重したいもの。そこで私は、半分無くなってしまった卵の代わりに同量の牛乳を加えて、その後の工程はみんなと同じように進めていきました。                                                              
 そして、牛乳を足した子が作ったものは、チーズケーキではなく、チーズプディングになったのです。

「卵が半分こぼれちゃったけど、それを活かして牛乳を入れたら、新しいレシピが完成したよ!◯◯ちゃん特製レシピだね」

もうこの瞬間、その子の顔には何の曇りもありません。満面の笑みで得意げに周りに披露しています。
チーズケーキはどっしり濃厚な味ですが、チーズプディングは少し軽い口当り。どちらもそれぞれおいしく、子どもたちは満足げに食べていました。

次のページ
失敗から生まれるもの