週刊朝日 2023年3月3日号より
週刊朝日 2023年3月3日号より

「悩み相談に乗って、解決策はAか、それとも真逆のBかとなったとき、私から『B案がいい』というアドバイスをしたことがあって、相手も同調したように見えた。ところが後日聞いてみると、相手が選んだのはA案。あんなに納得していたのになんで?と不思議に思ったのをきっかけに、本格的にカウンセリングの勉強を始めたのです」

 解決のヒントのいくつかはすでに相手の心にあり、それを一緒に探すのがカウンセラーの仕事であることに気がついた。

 ちなみに、人の愚痴を聞くときに覚えておきたいテクニックもいくつかある。まず目線。カウンセラー講座では「つねに相手の喉元あたりを見るとよい」と教わったというが、グッチさんは「自然な目線」を心がけているそう。では相づちや、うなずきは?

「うんうんうん、と小刻みにうなずくより、話の区切りで大きくうなずくほうが相手には聞いていることが伝わりやすい。私の場合、相手の話の句読点のタイミングでうなずき、意味深い句点のところで大きくうなずくようにしていますね」

■愚痴聞き屋が副業で人気に

 もうひとつ。他人の愚痴を聞く場合、自分がひどく弱っているときは避けること。心が弱っていると相手を受け止めきれなかったり、重い話に巻き込まれてそこからしばらく抜け出せなくなったりする可能性もある。

 愚痴を言うほうも、相手に最後までキチンと聞いてもらえるよう、愚痴るコツがあるという。

「例えば上司などの悪口を愚痴るとき、忘れてはいけないのはいつも話の軸は自分であることを意識して話すことでしょう」

 例えば上司の課長が嫌いという場合。「課長はひどい」「おかしいとみんな言っている」というのと「過去に課長に怒鳴られたことがトラウマになって、以来課長とは極力話さないようにしている」というのでは、自分を軸にした後者のほうが状況を打破するヒントが見つかりやすいという。

 ちなみにこの愚痴聞き屋。副業OKの企業が増えるにつれて、電話でできる“内職”としても脚光を浴びるようになった。「ココナラ」や「タイムチケット」など、自分の時間やスキルを販売できるサイトを見ても、いろんなスキルに交じって「愚痴聞きます」や「愚痴聞き屋」というキーワードがズラリ。その気になれば愚痴聞き屋を開業するのも簡単だ。

 ただし、最近、スキルマーケットの一つに登録して、愚痴聞き屋を開業した会社員の男性はこう“愚痴”る。

「料金は電話やオンラインで1分100円など。でも、手数料がけっこうかかる場合もあって、1日張り付いていても数千円にしかならないことも。会社員並みの稼ぎをしている人は、ごくわずかだと思いますね」

 私はというと、ここまで書いて、心のうちはさらに整理整頓された。がんばれば愚痴聞き屋という副業の道もありそうだし。週刊朝日の休刊でめそめそ泣いていたのに、うそのように気持ちが晴れてきた。あなたは遠くに行ってしまうけれど、私はもう大丈夫。長い間ありがとう。(ライター・福光恵)

週刊朝日  2023年3月3日号