考えてみれば休刊のお知らせを受け取って3週間。テレビを見ては「ここ取材で行った」とか、「昔この人のファッションチェックをしたなあ」とか思い出しては、長年つきあった恋人に振られたような気持ちになって、どんより。でも具体的に、自分が何にもやもやしているのかなんて、考えたこともなかった。

■口に出すことで心の整理整頓に

 そうして愚痴でもなんでも、口に出すことが心の整理整頓になり、何だか気持ちが晴れてきた。愚痴の効能を実感したところで、グッチさんの愚痴聞き上手ぶりをおさらいしてもらった。

「自分で悩んでいるときのことを考えてみると、心の中の毛糸が絡まっているような状態。でも人に話すことによって、その絡まっている毛糸をほぐすことができる。で、最後に心の中を全部出したときに、『あー、自分ってそういう人だったんだ』というのが、よく見える。愚痴を言うことで心の整理ができたという状態だと思います」

 こうして相手にある程度の愚痴を吐露させるところまでは、黙って聞いていればできることだというが、問題は最後まで黙って聞いていられない聞き役が多いことだ。

「最初こそ、相手の愚痴を注意深く聞くものの、いつのまにか解決策を見つけて相手をラクにしてあげたいと思ってしまう人は多いんです。話を聞いているつもりが、あの解決策はどうか、この体験談はどうかと頭に巡らせ、あげく相手の話が耳に入っていない。よくある失敗パターンですね」

 つまり、相手が愚痴を言うことで求めているのは、解決策や経験者の体験談より、自分の気持ちや価値観を理解し、認めてもらうこと。もし、アドバイスがほしいときも、実は自分の心の中に、どうしたいのかというヒントが隠れていることがほとんどだ。ただし聞き手はそれを引っ張り出すのではなく、本人が見つけられるように「ついていく」感覚が必要だという。

 グッチさんが、カウンセラーを目指したのも、それに気がついたことがきっかけだった。

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