街では日本人も多く見かけ、一人旅の若い女性やべビーカーを押した親子連れもいた。ホテルで一緒になった都内から来たという5人家族は「最初ハワイも考えたんですけど、遠いし、何かと出費もかさむので」と話していた。
ウラジオストクの中心部は、金角湾の入り江に面した部分に形成されており、コンパクトにまとまっている。主な見どころには徒歩で行くことが可能だし、バスやタクシーにも困らない。港と山手エリアに分かれており、横浜在住の自分にはどこかなじみのある街並みだった。
大きな観光スポットがあるわけではないが、街歩きやカフェ巡りを楽しむだけでも十分楽しい。帝政ロシア時代に建てられた優美な建物の他、旧ソ連時代に軍事都市であったウラジオストクには、軍事関係の博物館も多い。街の中心には、第2次世界大戦を戦った潜水艦が展示されていた。
物価は日本の約3分の2程度。庶民的な店なら、1杯100円程度、ちょっといいレストランでも700円程度で本場のボルシチが食べられる。日本語メニューが用意されている店もあった。スイーツも豊富で、どの店もレベルが高い。
ロシア芸術を味わうこともできる。「国立マリインスキー劇場沿海地方ステージ」では、1年を通じてバレエ公演が行われている。我々も日本からチケットを予約して出かけた。
ただし、ホテルは旅行者増に追い付けず、選択肢も少ない。ミニホテルの3人部屋が1泊約2万円程度と、やや割高な印象だった。
緯度は札幌とほぼ同じで過ごしやすく、滞在中、一度も20度を超えなかった。2時間半のフライトで日本の猛暑を逃れ、ヨーロッパ旅行ができるのだ。日本との時差はプラス1時間なので、2泊3日ぐらいから楽しめそうだ。
現在は成田空港、関西空港、新千歳空港から直行便が出ている他、韓国の東海経由で鳥取県境港から定期船が出ている。また、今年7月、日本航空(JAL)と全日空(ANA)が2020年春に直行便を就航させることを発表し、話題になった。
新たな「安近短」の旅行先として、伸びしろを感じさせる都市だった。(写真家・小林キユウ)
※AERA 2019年9月23日号