山手から海まで続く「噴水通り」は美しいヨーロッパの街並み。レストラン、カフェ、雑貨店などでにぎわう(撮影/写真家・小林キユウ)
山手から海まで続く「噴水通り」は美しいヨーロッパの街並み。レストラン、カフェ、雑貨店などでにぎわう(撮影/写真家・小林キユウ)
この記事の写真をすべて見る

 ロシアのウラジオストクが人気急上昇中だ。東京から約1千キロの「安近短」都市にもかかわらず、あまりなじみのなかったウラジオストク。2年前に電子ビザが導入されたことで世界からも注目を集めている。AERA 2019年9月23日号に掲載された記事を紹介する。

【写真特集】人気急上昇!ウラジオストクの魅力を写真で紹介

*  *  *

 成田空港から約2時間半、日本から一番近いヨーロッパとして今、ロシアのウラジオストクが人気を集めている。ロシア沿海地方政府によると、2019年上半期の外国人来訪者数は約40万人、うち30万人は観光客で前年同期比で25%増、日本からも前年同期比2.3倍の1万1千人が同地を訪れたという。

 そんなウラジオストクに、8月半ばから約1週間、妻と中1の娘とともに旅行してきた。

 実はこの旅行、当初私は乗り気ではなかった。1998年、ロシアを1カ月旅したときの苦い思い出がよぎったからだ。個人手配が不可能で専門の旅行会社に依頼したものの、旅の手続きは煩雑で、困難を極めた。現地に行っても、ホテルのフロントで「ワン・ツー・スリー」さえ通じない。ウラジオストクには旅の最後に立ち寄ったが、駅前にはガラの悪そうな若者がたむろしており、ロシアに住む知人からは「夜は決して外に出てはいけない」と忠告された。日本に帰国する船は予告なく出航が1日早まり、危うく乗り損ねるところだった。

 だが、そんな状況は一変していた。17年8月にロシアでは沿海地方向けの無料の電子簡易ビザが導入され、旅の手続きは驚くほど簡単になっていた。ロシア外務省のウェブサイトに必要事項を入力して顔写真をアップロードすれば数日後には申請許可のメールが届く。航空券はネットで1人往復約5万円のチケットを購入、ホテルも予約サイトで手配できた。一気に旅のハードルが下がった。

 街中もまた、20年前とはまるで違った。以前は観光客が立ち寄れる店などほとんどなかったが、明るい雰囲気のレストランやおしゃれなカフェ、土産物店が数多くあり、人々はみなフレンドリーで友好的だ。ロシアは18年のFIFAワールドカップ・ロシア大会をきっかけに、観光客の受け入れに積極的に取り組みはじめたというから、その影響もあるかもしれない。英語も問題なく通じ、かつて旅行者同士で“おそロシア”と語り合った姿はなかった。

次のページ