冠水した佐賀市の住宅。8月28日午後3時時点で福岡、佐賀、長崎の3県で87万619人に避難指示が出た (c)朝日新聞社
冠水した佐賀市の住宅。8月28日午後3時時点で福岡、佐賀、長崎の3県で87万619人に避難指示が出た (c)朝日新聞社
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 8月末、九州北部を襲った大雨で、最も危ないレベル5の「大雨特別警報」が出た。9月も続く台風により、いつどこで同様の水害に遭うかわからない。とりわけ危ないと指摘される大都市の洪水と津波による浸水リスクを調べ、備えるべきことを取材した。

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 今まで体験したことのない大雨だった。

「とにかく子どもを守ろうと必死でした」

 佐賀県武雄市の会社員の男性(40)は、疲れ切った声で語る。

 8月下旬、九州北部を襲った「記録的な豪雨」。佐賀県や福岡県では車が流されるなどして、少なくとも3人の死亡が確認された(29日時点)。

 武雄市では28日午前5時50分、警戒レベルの最も高い「大雨特別警報」が出された。ほぼ同時刻、男性の自宅床下に周囲の川から溢れ出した水が浸入してきた。

 男性が妻(32)と真っ先にしたのが10歳、4歳、2歳の子どもたちを2階に避難させることだった。その後、テレビや衣服、最低限の食料なども2階に上げ救助を待った。一家が警察のボートで救出されたのは午後3時半。車は水没し、自宅も床上まで浸水した。男性は肩を落とす。

「まさかこんな被害に遭うとは。明日からどうすれば……」

 雨。ありふれた自然現象が、各地に甚大な被害を与え、時に多くの命も奪い去る。気象庁によると、1時間に50ミリ以上の「滝のように降る雨」の発生回数を、統計をとり始めた1976年からの10年間と2009年からの10年間で比べると1.4倍になり、地球温暖化がもたらす水害の危険性が増している。

「秋雨前線に台風の到来が重なる秋こそ注意が必要だ」

 防災研究の第一人者として知られ、『日本水没』(朝日新書)の著書もある関西大学社会安全研究センター長の河田惠昭(かわたよしあき)さんは警鐘を鳴らす。

 日本列島の上に停滞する秋雨前線に台風からの湿った風が大量に流れ込むと、発達した積乱雲が連なる線状降水帯が発生し、大雨を降らせる可能性がある。「とくに注意すべきなのは、高層ビルが連なる大都市」と言う。「山」のように立ちはだかるビル群に風が当たると、強い上昇気流が起きて発達した積乱雲をつくり、大雨が降り続く。しかも現代は、山間部に降った大雨が滝のような勢いで川に流れ込み、広い範囲で氾濫(はんらん)する「連続滝状災害」と呼ぶ広域災害が起きる危険がある。

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