5、高い

 お金については前回の最後にちらりと述べましたが、外部委託するほうが自分の無償労働貨幣評価額より安く上がることがあります。「無償労働の額」ってなんだか矛盾したような言葉ですが、家事や育児って、無償に見えて実はそうじゃないってことですよね。シッター利用で時間を買うと、この「家事育児はタダ働きじゃない」という事実の可視化にもつながります。

 それでも高いと感じるなら、学生さんに頼む手もあります。我が家も親せきの中学生女子に、1時間5ドルという破格の値段で(普通は15ドルくらい)子守をお願いすることがあります。中学生だけを残して外出はできないので自分もそばにいる必要がありますが、それでも貴重なひとり時間を得られます。年の近いお姉さんが力いっぱい遊んでくれるので、娘もとても楽しそうです。

 アメリカでは、芝刈りや犬の散歩と並んで、子守がお小遣い稼ぎの手段になっています。ママコミュニティーには、「うちの子、シッターの資格を取りました!いつでも使ってね」とか「〇〇さんの子、シッターデビューしたって。頼みたい人は連絡を」というメッセージが回ってきます。中高生向けのベビーシッター手引書、赤十字社が提供するシッター養成講座(オンラインで受講可)などと教材も充実していて、座学と実学の両面から知識を蓄える環境が整っています。

 こうした年若いベビーシッター予備軍は、やがてプロのベビーシッター供給につながります。日本ではベビーシッターの数がそもそも少なく、それが需要の低さにつながっている気もするので、学生のうちから親せき・近所の子をお世話する文化が育てばいいなぁと思うのです。

 日本におけるベビーシッター利用率の低さは、そもそも誰も利用していないから躊躇してしまう、シッターの母数が少ないから相性のいい人に出会いにくい、と悪循環に陥っているように見えます。いったん回りだせば、子にも親にもいいこと尽くめのサービスだと思うんですが。

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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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