
7月21日の投開票に向けて、徐々に熱を帯びてきた参議院選挙。アエラで連載する2人はどう見るのか。
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●内田樹(神戸女学院大学名誉教授)
「参院選はどうなるのでしょうか?」とよく訊(き)かれる。よくわからない。政党が何を公約に掲げているかはわかるが、有権者が何を考えているのかがわからない。
3年前の参院選の投票率は、54.7%だった。かろうじて有権者の半数を超えたが、自公が圧勝した。今回の選挙でも、低投票率であれば政権与党が勝つだろう。だから、与党は「できるだけ喫緊の争点がないこと」を願っている。以前「無党派層は投票日には寝ていてほしい」と言った自民党総裁がいたが、まさしく小選挙区制は無党派層が選挙に関心を持たないことから政権与党が受益するシステムである。だから、今回も与党は全力をあげて有権者が選挙に関心を持たないようにふるまうはずである。
自民党が「改憲」を公約の第一に掲げたのはそのためである。公約に緊急性がないからである。世論調査で、改憲を重要な争点であるとした有権者は7.1%に過ぎなかった。自民党は改憲とは言うが、具体的に改憲条項(例えば緊急事態条項)を示して、その趣旨を説明し、情理を尽くしてその必然性を有権者に説き聞かせているわけではない。単に今日本が直面している外交内政の諸問題は「憲法を改正すればすべて解決する」という「物語」へのあいまいな同意を求めているに過ぎない。
いずれにせよ、今回もまた選挙結果は有権者の政治への関心の高さによってより、むしろ関心の低さによって決定されることになるだろう。(寄稿)
●稲垣えみ子(元新聞記者)
まず第一に、マスコミや政党が勝手に「争点」なるものを設定することに反対である。
だってこれだけ多種多様な課題が山積している中で、政党の公約の全てに賛成して投票する人なんているわけない。それなのに、その一部を取り出して、争点はここだと一方的に決められて、選挙結果をもってして「この政策が支持された」「だから心置きなくやらせてもらいます」などと言われても困る。困るっていうかほとんど詐欺だと思う。なので是非ともそういうことはやめてもらいたい。