2018-2019シーズンに現役復帰したフィギュアスケート選手・高橋大輔。引退当時の自分を振り返るとともに、二度目の現役選手としてのあり方を模索している。
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──アスリートにとって、いつ引退するのか、「引き際」を決めるということは、本当に大きなテーマだと思います。
高橋大輔(以下高橋):引き際と言われたら、僕はまず失敗した(笑)。今思えば、5年前の引退もしっかり線を引けてなかったんです。引退後、次のキャリアに切り替えるスケート選手が多いなか、僕はまだ線引きせず、中途半端。今でも自分に「何したいんだお前は」と思っていますが、「それでもいいや」と思えるようになりました。
──「それでもいい」と思えたのは、なぜですか?
高橋:ひとつ、「パフォーマーとして生きていきたい」という言葉をやっと言えたことが、自分にとってはとても大きな一歩になりました。現役最後のころは嫌で仕方なかったスケートを、逆に今は、求めています。その軸がひとつあることで、自分がもう大きくはブレないという自信があります。
──パフォーマーとして生きていくなかで、競技はどういう位置づけになりそうですか?
高橋:頭で整理して現役を選んだのではなく、自分を追い込むために「現役復帰」という言葉を選んだというほうがしっくりきます。「現役」という言葉は、競技者というよりもっと感覚的なものです。競技者は勝たなくてはいけないし、4回転を跳ばなくてはいけないと思われるけど、試合に何を求めるかは自分次第です。やるからには誰もが勝とうと思っているけれど、「勝つ」ということの基準をどこに置くかが変わってくると思います。