スポーツ界にもたくさんヒーローがいた。先日、引退を表明したイチロー。都内在住の会社員の女性(44)は、地元神戸で見ていたイチローの姿が忘れられない。

「商店街を歩いていたオリックスの“鈴木選手”は、“イチロー”に変わってみるみる有名になって、遠く羽ばたいていった。平成の大スターだと思います」

平成はテクノロジーが著しく進化を遂げた時代でもある。大きなバッテリーを抱えて持ち歩いていた携帯電話は、いまや手のひらサイズのスマホに。小型携帯が出回る前まで市民権を得ていたのはポケベルだ。

 初期ポケベルでは「4649」(ヨロシク)、「0906」(オクレル)など、数字でメッセージを伝えるのが定番だった。静岡県焼津市の会社員、西村公明さん(40)は、ポケベルでメッセージを送るため、親に頼み込んで家の固定電話を黒電話からプッシュホンに換えてもらった。

「山のほうに住んでいたので電波が悪いから、当時付き合っていた彼女に『今からメッセージ打つね』とわざわざ電話をもらっていました。電波がいい窓際にポケベルを置いて、メッセージが届くのを待っていたのが懐かしい」

 ポケベルからスマホへの変遷に象徴されるように、時代はあっという間に移り変わった。
「平成は時の流れが速すぎて、常についていくのに必死でした。だからこそ、常にアンテナを伸ばそうと努力していた気がします」(西村さん)

 音楽の楽しみ方も変わった。カセットテープからCDへと移行。CDから“ダビング”してマイベストMDを作るのに情熱を注いだ人もいた。音楽がネットを通じて配信されるようになった今、ダビングなんて言葉すら知らない若者もいるだろう。

 インターネットが普及したのも平成に入ってからのこと。もはやネットのない世界など考えられない世の中になっている。(フリーランス記者・宮本さおり、大楽眞衣子)

AERA 2019年4月29日-2019年5月6日合併号より抜粋