菅義偉官房長官は、2月14日の記者会見で県民投票について「どのような結果でも移設を進めるか」との質問に、「基本的にはそういう考えだ」と答えた。各メディアは、政府の「推進姿勢」を強調したが、上智大学の宮城大蔵教授(政治学)は、「基本的には」という言葉に興味をひかれたという。
「何かの含みをもたせたのか、さすがにここにきて少し弱気になったのか、あるいは単なる言葉のあやにすぎないのか。それはともかく菅氏が、結果が出る前から県民投票に影響されない姿勢を強調するのは、逆にそれだけ県民投票の結果を警戒しているからではないでしょうか」(宮城教授)
菅官房長官を中心とする現政権は、翁長前知事の足元を切り崩し、沖縄の民意は移設反対一辺倒ではないという状況を作り出すことによって、辺野古移設の安定的な推進を可能にする政治環境を作り出そうとしてきた。しかし、問答無用の強硬な対応は、県民のあきらめを誘うどころか、強い反発を引き起こした。その結果が、昨年9月の知事選での自公候補の大敗だと、宮城教授は指摘する。
「現政権は、沖縄で強硬策をとっても全国的な政権支持率には響かないと、たかをくくっていたように見えますが、先の知事選での玉城デニー氏の大勝によって沖縄の民意が鮮明に示されたことで、風向きが変わってきているようにも感じます。アベノミクスと称する大規模な金融緩和をはじめ、安倍政権の政策は、どれも出口が見えないものばかりになりつつある。ロシアとの北方領土交渉も、とても政権浮揚策にはならないでしょう」
その上で、宮城教授はこう予見する。
「安倍政権の権力基盤は、これから確実に下り坂になります。県民投票で移設反対の明確な民意が示されるとなると、表向きの強気の態度とは裏腹に、現政権にとっても辺野古移設を進めることはますます政治的な重荷になるでしょう」
政治的な見通しも立たず、技術的にも困難が予想される工事を、「とりあえず、できるところから」という無責任な姿勢で着手してきたツケは、県民投票後に政府自身にのしかかる、というわけだ。(AERA編集部・渡辺豪)
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