県民投票は一部自治体が一時不参加を表明したことで、「賛成」「反対」に「どちらでもない」を加えた3択になった。これについて武田教授は、県民が「投票結果をあいまいにさせたい国の意図」と見極めれば、「実害はあまりない」と見る。
「県民投票の結果、圧倒的な『反対』の民意が示されれば、国は今後予見される裁判で不利な要素が増すことを知るからこそ、『法的拘束力はない』とか、投票結果にかかわらず工事は進めると繰り返し、反対の民意が顕在化しないよう印象操作をしているのです」(武田教授)
辺野古新基地建設を進める上で、知事が権限を行使できるのは埋め立て承認の「撤回」や「取り消し」だけではない。政府が年内にも県に申請する方針を決めた地盤改良工事に伴う「設計変更」も知事の承認が必要となる。この際、「民意」が知事判断の重要な論拠になることにも留意しなければならない。
設計変更の必要性は、埋め立て予定海域の北東側の大浦湾で地盤の強度を示す「N値」がゼロの「マヨネーズ状」の軟弱地盤の存在が浮上した時点で指摘されていた。これが明らかになる契機となった、沖縄防衛局の14~16年の海底掘削調査に基づく地質調査報告書を昨年3月に情報公開請求で入手した元土木技術者の北上田(きたうえだ)毅氏は言う。
「これまでに判明した軟弱地盤に関する情報から判断すれば、辺野古に新基地を建設するのは不可能としか言いようがありません」
昨年3月に公開した報告書を踏まえ、国は追加調査を実施し、対応策を検討した。その結果、驚愕の事実が次々浮かんでいるのだ。
一つは、大浦湾の護岸予定地付近で確認された軟弱地盤の深さだ。追加調査の結果、前回調査よりさらに20メートル深い、水面下最大90メートル(水深30メートル、地盤60メートル)に達することが判明した。
もう一つは、軟弱地盤の範囲だ。大浦湾の外側に面した岸壁となる護岸部分だけでなく、湾の内側の埋め立て部分でも水面下80~85メートルの軟弱地盤が広がっていることがわかった。このため、大浦湾の埋め立て区域の半分に相当する57ヘクタールという広範なエリアで地盤改良が必要となり、計約7万7千本の砂杭を打ち込む予定であることが明らかになった。