釈徹宗(しゃく・てっしゅう)/1961年生まれ。相愛大学人文学部教授・宗教学者。大阪府池田市の浄土真宗本願寺派如来寺住職。特定非営利活動法人リライフ代表。仏教や芸能に関する著書多数(撮影/写真部・小山幸佑)
釈徹宗(しゃく・てっしゅう)/1961年生まれ。相愛大学人文学部教授・宗教学者。大阪府池田市の浄土真宗本願寺派如来寺住職。特定非営利活動法人リライフ代表。仏教や芸能に関する著書多数(撮影/写真部・小山幸佑)
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 宗教学者でもある釈徹宗(しゃく・てっしゅう)さんによる『異教の隣人』は、日本で生活するさまざまな異教徒のコミュニティーを訪ね、彼らの話を聞くことで日本社会の今後を考えていくルポルタージュだ。著者の釈さんに、同著に込めた思いを聞いた。

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 都会に暮らしていると、電車で、コンビニのレジで、路上で、外国人の姿を見ない日はない。しかし、彼ら「隣人」の信仰生活を知る人は少ないのではないだろうか。

 浄土真宗本願寺派の僧侶で宗教学者でもある釈徹宗さんが毎日新聞大阪本社から「何か宗教についての連載をしたい」と申し出を受けた時、真っ先に頭に浮かんだのがそのことだった。

「ちょうどパリでイスラム過激派によるテロが起きた頃で、欧米では移民排斥の動きが強まっていました。日本にもイスラム教徒に限らずいろいろな信仰を持つ方々がおられ、今後同じような問題が起きないとも限りません。彼らとお互いに尊重し合う道を考えるのは喫緊の課題だと考え、身近な異教徒の世界を訪ねる企画が実現しました」

 毎日新聞からはさまざまな個性を持つ4人の記者が交代で取材に加わり、マンガ家の細川貂々さんも参加した。取材を始めてみたら、カトリックやロシア正教、イスラム教という大どころ(?)はもちろん、コプト正教、ジャイナ教、ユダヤ教、シク教、ベトナム仏教、タイ仏教、華僑や韓国の各習俗など実に多種多様な信仰を持つ人々が日本で暮らしていることがわかった。とうに日本は移民社会だったのである。

「たとえば、兵庫県姫路市ではかつてベトナム難民が来日した際に、キリスト教会が受け入れに力を尽くしました。定住したベトナムの人たちはそのことに感謝しながらも、親のお葬式はやはりベトナム仏教でやりたいと寺院をつくったのです。お寺に集まるようになると、以前は荒れていた人々も安定したそうです」

 お坊さんのお説教を聞き、一緒に祖国の料理を作って食べる。異国で暮らしていても、同じ何かにつながっているという実感は過酷な人生の支えとなり、心の安定につながっていく(ちなみに、本書に登場する食べ物は、どれも実においしそうである)。

「日本はずっと、公教育で宗教を教えておらず、多くの人はそれぞれの信仰に敬意を持って接することを考えてきませんでした。でも信仰を持つ人々にとって、信仰とは人生や人格そのものなんです」

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