労働力としてだけ彼らを見ていると決して気づかないもの。それが彼らの信仰であり、文化であり、生活様式である。『異教の隣人』というタイトル通り、私たちの「隣に住む人」だ。
本書は、日本という国で共に生きる人々の息づかいを知る格好の道案内である。(ライター・千葉望)
■書店員さんオススメの一冊
『ブラック化する教育 2014-2018』は、教育を基点に、現在私たちが直面している問題を捉え返した一冊だ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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本書所収の対話に通底するのは、国家主義的に推進され、不平等を肯定し、貧困・格差を助長する教育の新自由主義化への根底的な批判である。
斎藤貴男・佐藤学との対話では、教育行政の中央集権化によって教育現場の自律性を奪う安倍政権を徹底批判。宇都宮健児との対話では教育費高騰と高利子の奨学金返済に苦しむ学生を生み出してきた「受益者負担の論理」からの脱却の方途を探る。内田良との対話では危険度外視で感動を演出する組体操や、教員や生徒を疲弊させ理不尽さに人を馴致させる部活動など、教育の病理を摘出する。これら教育の現状は「日常の戦争化」であると捉え斎藤美奈子との対話を通じて教育と政治の関係を深く議論する。
教育は国家や市場のものではなく、一人ひとりのための公共的役割を持つものだという著者の主張に強く同意する。
※AERA 2019年2月11日号