博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所の調査によると、新聞・雑誌などを含めた1日のメディア総接触時間は全世代平均で6時間36分。10年前の調査と比べて1時間17分ほど増えた。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の合計は減り、パソコンはほぼ横ばいだが、携帯電話/スマートフォンが6倍近くにまで増えている。10年前は調査項目になかったタブレット端末も2014年には登場した。
なかでも若い世代で影響は顕著だ。東京地区の20代男性の場合、1日のメディア総接触時間は7時間52分。そのうち、デジタルメディアは75.9%を占める。毎日6時間近くデジタルメディアを使用している計算だ。女性は男性と比べるとやや短いが、それでも同20代女性のメディア総接触時間は1日あたり7時間11分。デジタルメディアに限っても4時間半以上になる。冒頭の女性は平均を大きく上回るが、仕事でデジタルメディアを使用しない人もいることを考えると、決して特異な数字ではない。
デジタルメディアとの接触時間が増えれば、その分リアルな世界での対人経験は少なくなっていく。この「対人経験度」が視線耐性を左右する要素の二つ目。冒頭の女性を例にとると、1日で他人と会話するのは仕事中の雑談と1、2件ほどある打ち合わせくらい。プライベートで友人と会うのは週に1回あるかないかだ。一人暮らしで、家族や友人との連絡も主にLINEなどを利用し、通話することはあまりない。生活の中で人と話す機会が少ないから、対人経験は深まらない。
かつては、学生時代に視線耐性が低くても、社会に出れば自然と対人経験を積んでいき、視線耐性も高まっていくケースが多かった。しかし、
「一昔前に比べて、自分一人で完結する仕事が増えています。朝軽く挨拶したら、あとはずっとパソコンに向かうだけ、という仕事も多い。昔は研究者など限られた仕事がそうでしたが、いまはそれが珍しくなくなっています」(森川さん)
スマホは年々高性能になり、それ以外にもあらゆる便利なデジタルメディアが登場している。全体のトレンドとして、今後もデジタルメディアとの接触時間がのびていくのは明白だ。(編集部・川口穣)
※AERA 2019年2月4日号より抜粋