吉田は初回の守備に就く際とグラウンド整備後の6回、最終回の計3度にわたって、中堅手と侍の居合い抜きのような「侍ポーズ」(別名「シャキーンポーズ」)を交わし合うことによって、緊張をほぐしていた。チームの快進撃とともに、侍ポーズもその象徴的な存在として、すっかりおなじみになっていた。

 ところが、準決勝の日大三戦を前に大会本部から「野球と関係のないパフォーマンスは不必要」という理由で、自粛を通達されてしまう。このため、この日の吉田は、よく見なければそれとわからない控えめなポーズを見せるだけにとどまった。

 また、同年夏の甲子園では、創志学園の2年生エース・西純矢(現阪神)も、2回戦の下関国際戦で、球審から「必要以上にガッツポーズをしないで」と注意されている。

 昨今は、ケースによっては誤審も認めるなど、時代の変化とともに対応も柔軟になりつつある高校野球だが、「高校生らしさ」を金科玉条に大人の価値観を押し付けることについての是非は、今後も論議の的になりそうだ。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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