先日終了した第95回センバツ高校野球では、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝した侍ジャパンの一員、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)のパフォーマンス「ペッパーミル」を真似た東北高の選手が、審判からやめるよう注意される事件が起きた。試合後、監督も「何でこんなことで、子供たちが楽しんでいる野球を大人が止めるのかな」と疑問を呈するなど、波紋を呼んだ。
ペッパーミルは、両手で胡椒挽きを使って、胡椒を振りかける真似を演じることによって、「小さなことからコツコツつないでいこうぜ」と自軍の選手たちにチームワークの大切さを伝えるパフォーマンスであり、けっして相手チームを挑発する意味合いはない。
だが、エラーで出塁した直後という配慮を要するシチュエーションから、「不適切な行為」と審判団に受け止められたようだ。高野連も「不要なパフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようお願いしてきました。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしい」と“してはいけない”理由を説明した。
そして、高野連側も認めているとおり、球児たちのパフォーマンスが問題視された事件も、今に始まったわけではない。
最も有名なのが、1985年夏の西東京大会2回戦、南野vs永山で起きた“ホームラン取り消し事件”だ。
0対0の2回、南野は無死一塁で6番・斉藤俊一が左越えに先制2ランを放った。これが記念すべき公式戦初本塁打。喜んだ斉藤は三塁を回る際に、飛び出してきたベースコーチと右手と右手を合わせ、バチンと叩き合った。
ところが、このパフォーマンスが塁審に「高校生として見苦しい行為」と判断され、「肉体的援助」(野球規則7.09h)としてアウトを宣告されてしまう(記録は三塁打)。
だが、本塁打の場合、ベースコーチの肉体的援助は、プレーに何ら影響はなく、無理やり感は否めない。都高野連も「審判のミスと言われてもしょうがない判定でした」と“勇み足”を認めた。