受験が間近になり、睡眠時間を削ってでもラストスパートをかけたいという受験生もいるだろう。
江戸川大学人間心理学科教授で同大睡眠研究所所長の福田一彦さんは「10代は8~10時間ほど睡眠時間が必要だが圧倒的に足りていない」と指摘し、その影響についてこう懸念する。
「睡眠をないがしろにすると、脳が萎縮し、うつや認知症、がんや生活習慣病など、心身の不調のリスクを高めます。睡眠には覚えたことを忘れにくくするという効用もあります。睡眠不足になると集中力や記憶力の低下が起き、受験生にもマイナスです」
特に問題視しているのは、受験世代の子どもたちに多い「夕方の仮眠」だという。
文部科学省が2014年11月に実施した「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査」では、学校から帰宅後、30分以上の仮眠をとっている児童生徒は「よく」「ときどき」を合わせ、小学生は20.9%、中学生は38.4%、高校生は44.5%にものぼる。
「仮眠で睡眠不足を補うと誤解している人が多いですが、逆に睡眠のリズムを阻害します。文科省の同じ調査で、夕方30分以上の仮眠をとっている子どものほうが『午前中調子が悪い』『なんでもないのにイライラする』割合が高いという結果も出ていて、午前中に眠気がある人は要注意です。休日に起床時間が1時間以上遅くなるのも生体リズムの狂いにつながります」(福田さん)
夜型で勉強を続けてきた人も、試験時間帯に実力を発揮できるように、朝型にシフトしていくほうがいい。福田さんによると、体内時計は24時間より長いため睡眠のリズムを後ろにずらすのは簡単だが、前にずらすのは難しい。少なくとも1週間ぐらい前から寝る時間を30分ずつ早めていくことがポイントだという。寝つきをよくするために、夕方以降は白色照明よりオレンジ色の照明で過ごし、朝起きたら、屋外に出て自然光を目に入れて体内時計をリセットするといい。