東京圏のピーク時の混雑率は163%(2017年度)。この10年はほぼ横ばいだが、混雑率1位の東京メトロ東西線は199%にもなる。国土交通省によれば200%は「体が触れ合い相当圧迫感がある」状態だ。

 東京一極集中が加速する中、今日も「痛勤族」はギューギューの満員電車でつり革にさえつかまれず、ヨレヨレになって会社や家にたどり着く。しかも都心に近い不動産は高騰する一方。せめて座って通勤したい……。そんな切なる願いをかなえてくれるのが通勤ライナーだ。

 通勤ライナーに法規的な定義はないが、朝夕の通勤ラッシュの時間帯に数百円の追加料金を払って「必ず座れる」列車をいう。チケットは座席定員分しか発売しないので確実に座れ、所要時間がほぼ特急並みなのが売り。昨年から今年にかけては、首都圏に相次いで通勤ライナーが登場して群雄割拠の時代を迎えている。

 冒頭で紹介した京王ライナーのほか、西武鉄道は昨年3月に西武池袋線の所沢と東京メトロ有楽町線の豊洲を結ぶ「S-TRAIN」を、今年3月には西武新宿と拝島を結ぶ「拝島ライナー」を投入。12月14日には東京急行電鉄が「Q SEAT」の運行を始めた。

 Q SEATは大井町線の新型車両「6020系」の7両編成のうち1両を、ロングシートからクロスシートに転換する。平日の夜19~23時台に大井町駅を出発して、田園都市線の長津田駅まで直通運転する。無料のWi-Fiが使え、座席には電源コンセントやカップホルダーも。車内の照明は心地よさと暖かみを感じられるよう暖色系のLEDにした。

 鉄道事業本部課長補佐の北野喜正(よしまさ)さんは「高まりを見せるお客様の着席ニーズにお応えすべく、満を持しての導入です」と胸を張る。(編集部・野村昌二)

AERA 2018年12月24日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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