一方、「若手との飲み会は、すぐにセクハラ・パワハラと言われるので、怖くて参加できない」(50代女性・サービス業)など、管理職の立場からも部下を誘いづらいという声があった。

 せっかくの飲み会が、不幸な場になってしまっている原因はどこにあるのだろうか。

 まずは、精神保健福祉士で、コミュニケーション講座などを主催するダイレクトコミュニケーション代表の川島達史さん(37)に飲み会での会話術を教えてもらった。

「普通、飲み会は会議の延長ではありません。仕事のときとは会話の仕方を変えるべきです。それができないと、あの人の話はつまらないと思われたり、悪くすればパワハラに遭ったと言われたりするかもしれません」

 川島さんによると、コミュニケーションには問題解決を目的としたものと、人間関係の構築を目的としたものの2種類があるという。

「仕事中の会議では問題解決型の会話が中心ですが、プライベートな時間を使った飲み会なら、人間関係構築型がよいでしょう。会議と同じように会話するのはNGです」

 たとえば、「今日遅刻して怒られた」と話す同僚に対して、「どうして遅刻したの?」と返すのは問題解決型。「体調が悪かったの? 大丈夫?」などと返すのが人間関係構築型のコミュニケーションだ。飲み会で必要なのは、情報のやり取りではなく感情のやり取りなのだ。

 飲み会での会話では、質問を重ねるのもよくないという。

「次々に質問を続けてると、相手は詰問されていると感じます」

 質問を重ねているとなんとなくうまく会話が続いているように感じるが、それは質問している側の聞きたいことを聞いているだけ。実は、相手はストレスを感じがちだ。

「関係性づくりは情報集めとは違います。具体的には、質問は1分間に1回以内が目安。相手の答えをしっかり受け止めて、自分の意見や経験も付け足すなど会話を深めてみましょう」

 飲み会はプライベートな話をしやすいが、信頼関係がないのに深い話をするのはセクハラの危険信号だ。

「信頼関係がないのにプライベートを根掘り葉掘り聞いたり、自分のことを話したりするのはセクハラになりやすい。雑談を重視して、少しずつ親密度を高めましょう」

(編集部・川口穣)

AERA 2018年12月3日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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