上司も部下も、セクハラやパワハラが不安で飲み会を避けがちな昨今。参加者みんなが幸せになる飲み会のコツを専門家が指南する。
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「俺が若かったころはだなぁ」
上司が重々しく口を開くと、椅子の背もたれに取り付けられた六つのサーキュレーターが一斉にうなりをあげ、「先輩風」を吹かせ始めた。周囲からは思わず笑いが起こる。「よなよなエール」などのクラフトビールで知られるビール製造会社ヤッホーブルーイングが開発した「先輩風壱号」を使った飲み会の一コマだ。
先輩風壱号は、座った人が口にした「俺の若い頃は」「ヤバかった」「バブル」といったキーワードを検知するほか、話し手の興奮度や頑固さなども解析。
「先輩風サイン」を読み取り、サインの強さに応じて弱、中、強の3段階の風を出す。先輩に「あれ、先輩風吹かせちゃってるかも?」という気づきを促し、「風通しのいい」チーム作りに役立てる狙いだ。
同社では上下関係やハラスメントの問題を乗り越えたフラットな飲み会を通してコミュニケーションを活性化させる「チーム“ビール”ディング」に取り組んでいる。先輩風は、吹かせているほうは気づかないし、受けているほうも指摘しづらい。それをこの装置で“見える化”することで、気づきと笑いが生まれるのだという。
新卒2年目で7人のチームをまとめるプロジェクトリーダーの渡部翔一さん(25)は言う。
「上司にお酌しなければいけなかったり、セクハラを受けたり、つまらない話を延々と聞かされたりというイメージもあって『会社の飲み会がつまらない』と感じている人は多い。ですが、飲み会自体は悪ではありません。もっとフラットに、自由に会話できるようになれば飲み会は楽しくなるし、活発なコミュニケーションが生まれます。不幸な飲み会が減ったら、会社はもっと成長できるはずです」
「ウンチクたれたり、セクハラトークをしたり……本人は気付いていないのでつける薬がない」(50代女性・メーカー)、「仕事の話ばかりでつまらない」(40代女性・製造業)、「愚痴や自慢話が多い」(50代男性・サービス業)……。
AERAネットで行ったアンケートでは、4割近い人が職場の飲み会に対してネガティブなイメージを持っていることがわかった。特に多かったのが、セクハラやパワハラにつながりそうな上司・同僚の行為に辟易(へきえき)していたり、つまらない話を聞き続けなければならないことに対する違和感だ。