――ライフスタイルも大きく影響しているんですね。

 そうです。言葉の平板化も一因ではないかと思います。例えば、「ギター」と発音するとき、昔は語尾が下がっていましたが、今は平板化してしまっています。発声していただければわかりますが、アクセントを使わない後者は腹に力を入れる必要がなく呼吸が浅い。「やばい」「ムズイ」という言葉も一例です。形容詞の最後に付く「い」は、舌位置を高くしてのどを締めて発音するのですが、現在は「やばっ」「ムズッ」と語尾が楽な形になっています。それほど舌を使わずに、浅い呼吸でも話せる言葉になっているのです。

――お口ポカンの予防、症状が出たときの対処法を教えてください。

 おススメは「あいうべ体操」です。「あー」と口を大きく開き、「いー」と口を大きく横に広げます。「うー」と唇をとがらせて口を前に突き出し、「べー」と舌を思い切り突き出して、下に伸ばす。この体操を1セットで4秒くらいかけ、1日30回くらいを目安に行います。子供は声を出したほうがやりやすいでしょう。

 また、口笛、シャボン玉遊び、ガムで風船をふくらませることなど口遊びもおススメです。口笛、シャボン玉遊びは唇や舌を複雑に使うので、口まわりや舌の筋肉を育てるのに役立ちます。また、風船ガムはふくらます際に口やほお、舌の細かい動きが必要なので、口まわりや舌の筋肉の発達には最適です。

――対処法を知ることで精神的にも楽になりますね。

 ただ、これだけでは抜本的な対策になりません。食事、遊びを含めた運動、しっかり噛んで食べる習慣を身につけること、日常生活で口を閉じるように意識すること、すべてが重要です。食事の際にはテーブルにみそ汁、スープ以外の水分を出さないほうがいいと思います。食べ物が口にある状態で水を飲むと、そのまま流し込んで噛まなくなります。食事の際に水の摂取量を減らすだけで、噛む回数が増えます。

 また、食材を大きく切って提供することもいいと思います。光熱費が上がり、料理も時短目的で野菜などを細かく切ったほうが火が通りやすいのは承知の上ですが、大きく切った食べ物のほうがしっかり噛みます。野菜は千切りより、ざく切りにするなどちょっとした工夫が効果的です。

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