この三つがうまくいかないまま成人して家庭を持つと、夫婦が破綻したり子どもに手をあげたりしてしまうことがあるのだとか。

 でも、大人になってからもやり直しはできるそうです。女子会なんか、まさにそれだというのです。青年期にやり損ねたenvy(羨望)体験を積む場なのだと。確かに私も40代になってから、尊敬できる素敵な女友達が増えました。私にはできないことをしている友人たちは本当に眩しいし、では自分は身の丈で頑張ろう!と素直に思えます。

「本当はjealousyの克服もやり直すといいのだが、恋愛が難しいならこのenvyの経験だけでもするといい。そうしたらやがてintimacyの心境に至れるはずだよ。こんなことを言っているのは私だけだがね」と老精神科医は笑いました。パワハラ上司の背景にもこの三つの要素の未成熟があるだろう、とも。

 女性も男性も、今の日本に必要なのは、安心できる大人の友情なのかも。

AERA 2018年11月19日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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