今年第1子を出産した千葉県に住む女性(32)は「母乳で育てないと赤ちゃんの成長にかかわる」と、完全母乳を目指し出産後は母乳のために厳しい食事制限をして、体重は産後5カ月で妊娠前より6キロも減った。子育て情報サイトやブログで「母乳にいい食べ物」や「乳腺炎になる食べ物」をチェックし、脂の多い肉料理や乳製品を避け、好きなスイーツも封印。サラダや煮物ばかりを食べ続けた。

 激やせしていく姿を心配した夫から「特定の食べ物で母乳の質が変わることはない」と書いてある医師監修の本を渡され、根拠のない情報に振り回されていたのだと気づいた。

 リクルートマーケティングパートナーズが日本産科婦人科学会の協力のもとで
17年に実施した調査では、ネット情報など妊娠中に触れる知識について、産科医の86.8%が「信憑性が低い情報が多い」と答えた。一方、妊産婦はわずか33.3%がそう感じているだけ。専門家が「デマ」と感じる情報を信じる妊産婦が少なくないということだ。

 妊娠中から子育てまで、さまざまな情報に振り回されがちだが、逃れる方法はないのか。それは実は足元にある。

 江戸川区に住む契約社員の女性(47)は、実母から「小学校に上がる前にひらがなと足し算ができないといけない」と言われ、小1の長男が入学する前に必死に教え込んだ。中学2年になる長女のときは自然にひらがなの読み書きができたので、長男だってできると思い込んだ。だが、強制的にやらせても長男は勉強嫌いになる一方だった。

 しばらくして「嫌いになるくらいなら書けなくてもいい」と割り切った。入学後、長男をよく見て、やる気があるなと感じた時に、ドリルを2冊買って親子で進めたところ楽しんで机に向かっている。「こうすべき」という情報より、目の前の子どもをよく見ることが大事だと知った。

 乳幼児教育や子育て支援が専門の大豆生田啓友(おおまめうだひろとも)・玉川大学教育学部教授は「大事なことは日常にある」と言う。学力や運動能力など目に見えやすく、成果がわかりやすいことに注力しがちだが、それよりも、夢中になって遊ぶ直接体験の中で、意欲や集中力、粘り強さ、コミュニケーション力など目に見えない「非認知能力」を育むことが大事だという。

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