幸福学を研究している前野隆司・慶應義塾大学大学院教授によると、社員と職場の幸福度は「やってみよう!」「ありがとう!」「なんとかなる!」「あなたらしく!」の4因子がバランスよく満たされることが重要だという。この因子を満たす、新しい働き方を実践している企業を取材した。
「あなたらしく!」は独立とマイペースの因子だ。人の目を気にせずに自分のペースで働くことができる環境づくりは、社員の幸せにつながる。
経済ニュースアプリ・ニューズピックスなどを手がけるユーザベースは、創業8年で東証マザーズに上場した。同社の急成長を支えるのは、徹底した自由主義だ。稲垣裕介社長(37)は言う。
「自由な環境の中でこそ人は最も創造性を発揮できる。楽しいからやっちゃうという組織に、軍隊的に管理されている組織は絶対勝てません」
同社には、所定労働時間内ならいつ、どこで働くかを自由に決められる「スーパーフレックス制度」や1カ月間有給で休める「自由研究制度」も設けた。
ソフトウェア受託開発のソニックガーデンにはオフィスはない。毎朝出社するのは、オンライン上の仮想オフィスだ。代表の倉貫義人さん(44)は「本質は現実のオフィスで仕事するのと違いはない」と言う。
最初はチャットでやりとりしていたが、「互いの顔を見て仕事をすることが大切」と気づき、全員の顔を確認しながら社外で勤務できるソフトを開発した。
「場所は離れていても全員で楽しく仕事したい気持ちは他社と変わりません」(倉貫さん)
場所にとらわれない働き方が広まる中、日本航空は旅行先や帰省先での仕事を勤務時間として認める「ワーケーション」を昨年導入した。人財戦略部の東原祥匡さん(35)は今年のゴールデンウィークに5泊6日でシンガポールへ行く計画を立て、早めに航空券も購入した。だが、旅行中の1日だけイベントの企画調整の仕事が入った。
「これまでだったら、たった1日のために旅行自体キャンセルするところを、あきらめなくてすみました」(東原さん)