「みんな会社は自分たちのものという意識が強いので、本当に必要な経費かどうか、かえって真剣に考えています」(成瀬さん)

 メガネチェーンの21(トゥーワン)でも、社員の「自分たちの会社」という意識が強い。その意識を育てている一つが社員向けの「21応援預金」だ。経営に必要な資金はここから調達。会社の業績が上がれば利息もアップし、制度が始まった4年前は年2%だったが、年々上がり、昨年は法で決められている上限の年15%になった。銀行に100万円預けても、年に数十円しか利息がつかないこのご時世に、利息だけで年15万円だ。相談役の平本清さん(68)は言う。

「社員が投資家も兼務することで、本気で会社のことを考え、やる気も高まるんです」

 21のもう一つのキーワードが、「丸見え経営」だ。社内専用ネットを開けば会社の財務状況から日々進行している案件、個人の評価や給与の額まですべてわかる。全社員が同じ情報を共有することで、みんなが経営者目線を持つことができるという。

 クラウド労務ソフトの開発を行うSmartHRも情報公開を徹底している。銀行口座の残高や売上高など経営状況に関する数値から、株主と交わされた会話に至るまであらゆる情報を公開。そこまでするのは「自分で判断し、動く『自律駆動』型組織を目指しているから」(広報の渡邊順子さん、35)。

 毎週の経営会議のあとには、意思決定の内容や経緯、背景を全社員と共有する会も開かれる。

 階層組織で指示命令系統が明確な「ヒエラルキー」に対し、肩書や序列をなくし意思決定を分散化する新しい経営スタイルがある。「ホラクラシー」や「ティール組織」と呼ばれる形態で、アメリカから導入される前から日本国内で独自に実践していたのが不動産業界向けウェブ事業のダイヤモンドメディアだ。

 法律上、株式会社には1人以上の取締役が必要なため、社長はじめ役員を1年ごとに選挙で決める。社内のメンバーはもちろん、社外の人も投票できる。

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