みんなの給与は、みんなが参加する「お金の使い方会議」で決めるのもユニークだ。実施するのは半年に1度。
「ちなみに、自分の給与は自分では決められません」(広報の青柳まさみさん、32)
会議では「人件費は会社全体でこれくらいが健全」という情報をみんなで確認。そのうえで、株価のような感覚で、全員の給与を見直す。その人が持つ生産性について、マーケットバリューと社内での貢献度の両面から見ることで適正な給与の金額がおのずと決まってくるのだという。給与を考える上では、他のメンバーを楽にしたり、長期的に価値があったりする取り組みを行ったかなどが重視される。
ネットショッピングのプラットフォーム「ハピタス」などを運営するオズビジョンもティール組織の先駆けとして知られる。会社を「個人の自己実現のための手段」とし、上司や部下などの社会的役割を取り払った組織づくりを進めている。
「社員を役職として見ず、ホールネス(全人格)を理解してつき合うのは、労力も時間もかかります。でも、仕事や仲間に対する理解度は深まるし、真の協働が生まれる」
と語るのは広報室の風間尋実さん(49)だ。
「クエストランチ」という制度も、自分や仲間の本質を知る実践の一つ。全社員が「パフォーマー」と「サポーター」の2役に分かれてペアを組み、ランチに行く。対話を通じ、それまで気づかなかった互いの個性や強みを引き出すこの施策は、いまも進化を続けているという。執行役員の松田光憲さん(41)は、その意味をこう語る。
「社員の個性と能力の発揮。それこそが弊社の本質であり、失ってはならないものなんです」
自身の成長を実感できることも幸福度向上のポイントだ。
三越伊勢丹ホールディングスには社員の学び合いの場「SNACK」がある。スキル、ネットワーク、アティテュード(振る舞い)、コミュニケーション、ナレッジ(知識)と英語の頭文字をとったもので、勤務時間外の朝や夜にさまざまな講座が開かれている。