停電の原因は、震源に近く、北海道全体の約半分の電力を供給していた「苫東厚真発電所」が地震で緊急停止したことだ。同発電所は震度7を記録した厚真町にある。北海道大学地震火山研究観測センターの谷岡勇市郎教授によると、地震活動が活発な北海道だが、震度7を観測するのは今回が初めて。深さ40キロの断層が大きくすべったのが要因の一つという。
しかし、なぜ一つの発電所が止まっただけで北海道全土が停電になってしまったのか。東京電機大学の加藤政一教授(電力システム)が解説する。
「電力はためることができず、必要な分だけを発電所から供給できるように、周波数でバランスをとっています。これは発電機の回転速度にあたります」
より多くの電力が必要なときは発電機の回転速度を上げ、需要が減れば回転を落とす。今回のブラックアウトは、この電力の需要が、苫東厚真の緊急停止によって急激に変化したことが原因という。
●ドミノ式に停電が拡大
「需要と供給のバランスが急激に崩れると、周波数が乱れ、電気機器や発電機の故障を引き起こす原因になります。そのため電気の供給を遮断する安全装置が働き、それがドミノ式に道内全土の停電につながったのです」
つまり、最大の電力供給源だった苫東厚真が停止→道内全体が電力不足に→突然負荷がかかった他の発電所も停止──という流れだったとみられる。
加藤教授は「北海道ならではの事情もある」という。
「大きな供給停止があった場合、ほかの電力会社から電力の融通を自動的に受けられるのですが、北海道は独立した系統です。完全に直流だけで、本州から電気を受け取るには交流から直流に変換しなければならず、その量も限られます」
経済産業省によると、道内全域で電力が復旧するには1週間以上かかる見通しだ。北電は7日の午後0時現在で管内の約5割にあたる151万3千戸で停電が解消したと発表。供給力が不十分なため、復旧した地域にも節電を要請している。(編集部・澤田晃宏、野村昌二)
※AERA 2018年9月17日号