350グラム──。厚生労働省が推奨している、1日の野菜目標摂取量だ。だが、「国民健康・栄養調査」(2016年)によれば、1日の摂取量は男性で284グラム、女性で270グラムといずれも目標を下回っている。この高い目標数値はどうクリアすればいいのか。
強い味方の一つが野菜ジュースだろう。「1本で1日分の野菜350グラムを使用」などと表示された商品も目立つ。
「1日分の野菜」を手掛ける伊藤園の山口哲生・野菜果汁ブランドマネジャーは、1パックのジュースの中に「野菜自体は約550グラムを使用している」と話し、こう続ける。
「厚労省が推奨する350グラムで摂取できる栄養素を独自に算出し、それを満たすように野菜飲料を作っています」
ただ、新鮮な野菜だけで栄養素を満たせるわけではない。
「製造過程で野菜そのものから失われる栄養素もあります。水に溶けない不溶性の食物繊維は搾りかすとして取り除かれ、水溶性のビタミンは加熱で減少してしまいます」(山口さん)
脂溶性のビタミンAやビタミンE、ミネラルなどは熱で失われることはないが、算出された栄養素に満たない分は、食品素材や食品添加物で補っている。
それでも、ビタミンAなどは100%を超える栄養素を摂取できるものの、食物繊維は20%に満たない。1本の野菜ジュースにすべてを求めるのは困難だ。
「忙しくて料理を作る時間がないなど、さまざまな理由で日本人は十分に野菜をとれていません。そうしたときに野菜飲料を活用してほしい」(同)
同社では管理栄養士監修の、野菜飲料を「調味料代わり」に使うレシピ本も出している。
野菜ジュースの最前線として注目を集めているのが、コールドプレスジュースだ。健康に意識の高い40歳前後の働く男女を中心に支持を集めている。14年から日本初の専門店を展開する「サンシャインジュース」の伊地知泰威さんはこう話す。
「野菜や果物を生のまま圧縮し、素材が持つ水分を搾り出し、その水分100%で作ったのがコールドプレスジュース。野菜汁と考えてください」
ボトル1本のジュースを作るのに、1~1.5キロの野菜を使用しているという。