そう話すのは、フリーランスで広報などPRの仕事を手がける田美智子さん(37)だ。飲食店の予約管理システムなどで知られる「トレタ」の名物広報から、今年4月、電撃的にフリーランスに転身した。
会社員時代は朝一番のルーティンだった大量のメールチェックや返信は、今は起き抜けのベッドの中ですることも。自分の時間を、「自分でコントロール」できるのが何よりいい。
田さんも、冒頭の山田さんのいう「職人」×「相談役」×「城持ち」の掛け算タイプと言えそうだ。個人や会社のブログでスタートアップ企業向けの広報術の発信を始めると、「一緒に働きませんか?」と複数の企業から声をかけられるようになった。
会社に独立を相談すると、思い入れのあったプロジェクトについては、引き続きフリーとして関われることに。退職金がない代わり、そうした仕事の報酬も、社員時代と比べて遜色がないほど恵まれた待遇を提示された。
今は、無料でPRの手伝いをしている友人の会社を含め、6社のクライアントを持つ。親の年収、1千万円を超えるのが夢だったが、退職後の月収は「会社員時代の2倍ほど」。実現する日はすぐそこだ。
「むずかしいと思うのは、請求金額の割り出し方。フリーになった先輩に教えてもらったのは、必要な生活費と、労働時間から自分の時給を割り出して、実際にその仕事のために使った時間にかける方法。でもやっぱり、やりたい仕事が優先で、ぜんぜん守れていませんね」
生活の不安や悩みは「ないのが不安なくらい、ない」という。
今の生活を維持するより、やりたいことをやるのが幸せ。一人暮らしなので、「食べられなくなったら、知り合いの米農家でも手伝えばいい」と屈託ない。(編集部・石臥薫子、ライター・福光恵)
※AERA 2018年7月2日号より抜粋