「私にとって大切な軸は二つ。プロとして、誇りとやりがいのある仕事をすること。そして、子どもとしっかり関わる人生を送ること。両方をかなえられるのがフリーランスという働き方です」

 いま、古市さんが請け負う仕事は大別すると三つ。中心に据えるのは、破綻の危機にある企業の事業再生だ。収入も負荷もこれが一番高い。ほかに、自治体の経営相談員として、中小企業経営者や起業希望者から年間300件近い相談を受ける。さらに大学のインキュベーションオフィスのマネジャーとして、創業支援にも関わる。

 これらの仕事を組み合わせることで会社員時代と変わらない年収を稼ぐ。独力で購入した4LDKの一軒家のローン返済も順調だ。子どもの成長に合わせて案件を増やし、もっと稼ぐことも可能だと考えている。

 古市さんの武器になっているのは、外資コンサル時代に取得した中小企業診断士の資格。そして人脈だ。

「資格を取って終わりではなく、資格者同士の飲み会や勉強会に積極的に参加して、会社の外にネットワークを作りました。そのお陰で今、案件が安定的に舞い込んでくるんです」

 古市さんのようなビジネス系フリーランスに活躍の場が増えている背景には、企業側からのニーズの高まりがある。人手不足が年々深刻化していることに加え、転職が当たり前の時代、コストをかけても優秀な人材が定年まで働いてくれる保証はない。ならば専門的な知見やノウハウ、ネットワークを持つフリーランスを必要に応じて活用したほうが得策──。そんな意識が広まっている。

 アエラがフリーランスで働く人を対象に実施したアンケートでも、多かったのは「フリーになって満足度が増した」という答え。「理不尽な理由で無意味な仕事をしなくていい」「組織の面倒な人間関係に巻き込まれない」「ストレスが9割減った」「満員電車に乗らずにすむ」などメリットを挙げる声が、数多く寄せられた。

「旅をしながら仕事をするというのが、私のフリーランス生活。旅先の島や船の上で仕事をすることもありますが、その代わり、24時間365日、いつでもどこにいても、仕事の対応はしています。それを理解してくれる人とだけ仕事をする。天国です」

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