「米軍機が今も保育園の上空を飛ぶのは、私たちの人権が軽視されているのと同じ。これを許しちゃいけない、と声を上げているのですが、沖縄だけの問題として扱われ、日本の問題にならないのが歯がゆい」

 同園の保護者有志は、園上空の飛行禁止を求める12万筆超の署名を集め、2月に政府に提出した。その際、外務・防衛官僚らとやりとりした保護者の一人、知念有希子さんはこう言う。

「日本政府としての動きを尋ねても、『米側の回答待ち』という答えしか返ってきません。政府は私たちを守ってくれないんだ、と失望しました」

 米軍に約束を守らせられない主な要因は、日米地位協定にある。協定は、米軍関係者が日本の法令を「尊重する義務がある」と規定している。だが「尊重」しても、実際に「適用」されるとは限らない。航空法は低空飛行や物の投下などを禁じているが、日本政府は米軍機を特例として対象外にしている。

「葬儀は悲痛の涙であふれ、痛ましく、私自身が申し訳ない思いでいっぱいだった」

 3月20日の衆院安全保障委員会。前出の井上衆院議員は沖縄防衛局長として対応に当たった16年の元米海兵隊員の軍属による女性暴行殺人事件にこう言及し、河野太郎外相に訴えた。

「地位協定改定に、ぜひ一緒に取り組んでもらいたい」

 井上氏は沖縄赴任前、地位協定は運用改善で対応する、との政府のスタンスに疑問を感じなかったという。「改定」の必要性を唱えるようになったのは、沖縄防衛局がある嘉手納町で暮らした経験が大きい。

 米空軍嘉手納基地などを抱える同町は、町面積の8割強を米軍基地が占める。16年の女性暴行殺人事件から間もなく、行きつけの町内のおでん屋で、日米同盟の意義に理解を示す「基地容認派」の常連客が厳しい口調で井上氏に協定改定を求めたという。

「こういう事件が起きると、米軍に占領され事件・事故が頻発した当時の苦い思い出がよみがえってくるんですよ」

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