いまや4人に1人が「高齢出産」の時代。年を重ねてからの子育ては、体力的にも家計面でも特に厳しい。思い通りにならないことに日々直面する。でも、子どもの存在は、 そんなつらさを吹き飛ばしてくれる。これ以上ないたのしい世界──。
【図】アラフォー母、アラフィフ父になってよかったと思えた割合は?
* * *
我が子の寝顔を見つめていたら、涙がこぼれ落ちた。
私はこの子を何歳まで見届けられるんだろうか。30歳のこの子は? 40歳は? 昨年第1子を授かった都内に住む女性(46)は、ときおりそんなことを考えてしまう。
出産までの道のりは険しかった。40歳のときに婚活を始め、5歳上の夫と出会い、半年間の同棲を経て結婚した。夫に子どもがほしいかと聞くと、「いたら楽しいだろうね。自然にまかせてみようよ」。その気軽な気持ちにカチンときた。
「もし私が15歳若かったら妊娠は私立大学入学レベルだろうけど、 41歳の今は東大入るぐらい難しいの。塾(不妊治療の病院)にだって行かないとダメなんだよ」
夫婦で覚悟を決めると、さっそく病院へ行き、不妊治療を始めた。すぐに妊娠が発覚し、心拍を確認して喜んだのもつかの間、流産した。次も流産だった。大学病院で「不育症」の検査を受けたところ、血栓ができて胎児に血液が送られなくなる「抗リン脂質抗体症候群」が判明した。治療もして臨んだ3度目の妊娠は死産だった。
数カ月後。不妊治療を再開しようと病院へ行ったが、年齢がネックでやんわり断られ、目の前が真っ暗になった。もう43歳。妊娠できるタイムリミットが迫っているのを感じ、焦りが募る。受け入れてくれる“塾”を求めて大阪へも通った。
体外受精で4度目の妊娠。喜びよりも、また小さな命が消える怖さが大きかった。ようやく生きた子に会えた頃には45歳になっていた。
少子化が進む中、40歳以上の出産は増え続けている。人口動態調査によると、2016年に国内で生まれた日本人の子どもの数(出生数)は97万6978人で、1899年に統計を取り始めてから初めて100万人を割り込んだ。それほど子どもの数は減っているのに、母親が40歳以上の出生数は15年が5万3866人で、 10年前の2.6倍、20年前の4倍以上に増えた。父親の年齢が50歳以上の出生数も 15年は8236人で、20年間で2.4倍超だ。
AERAでは、アエラネット会員などに呼びかけ35歳以上で出産した女性、45歳以上で子どもが生まれた男性を対象にインターネットアンケートを実施。アラフォーで母、アラフィフで父になった理由を挙げてもらうと、晩婚が47%、仕事が33%、不妊が18%だった。