組織の中でも、外でも、自由に、のびやかに。結婚や出産という人生の節目や、社会の変化に直面しても、いつも、働き方を自分の手で切り拓いた女性たちがいた。
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東日本大震災は働き方や生き方に、大きな変化をもたらした。日本全国のお祭りを支援する「オマツリジャパン」代表取締役の加藤優子さん(30)も、その一人だ。
11年夏、美大生だった加藤さんは、青森市に住む祖母を訪ねた。恒例のねぶた祭を見に行くと、観光客の姿が例年より圧倒的に少ない。やはり震災の影響だった。だが、
「祭りが始まってびっくり。とにかく地元の人の盛り上がりがすごい。震災以降、あんなに人が夢中で楽しんでる姿を見るのは初めてってぐらい」(加藤さん)
お祭りはこんなにも、人を元気にするものなのか。実感する一方で、全国の祭りが後継者不足や資金不足による継続困難に陥っていることも知り、美大で学んだアートの力をお祭り支援に生かせないかと考えるようになった。
大学卒業後は埼玉県内の漬物メーカーに就職。休日には各地の祭りを訪ね歩き、SNSに報告をアップし続けた。
「今思うと、超つまんないレポート(笑)。何か手伝いたい、それを仕事にしたいっていう漠然とした思いだけで、どうしたらいいかがわからなかった」
それでも続けるうちに、一緒に祭りを盛り上げるサポーターが増えた。転機は、友人の父親が副会長を務める、商工会のハロウィーンイベントだ。仲間と共にポスターやチラシを作り、運営の手伝いをしたところ集客が倍増。これが評判を呼び、祭りの仕事依頼が来るように。
貯金300万円を元手に、思い切って勤めを辞めて起業したが、仕事は舞い込むものの、どこの祭りの主催者も資金難で、大した収益にはならない。そこで加藤さんはアイデアを企画書にまとめて、自治体のビジネスプランコンテストへの応募を始める。中小企業診断士にもアドバイスを請い、ブラッシュアップしてはコンテストに挑んだ。次第に出資者が集まり始め、経営戦略を手助けしてくれる取締役も迎えることができ、企業としての体制も整っていった。