平昌五輪を逃した樋口新葉が、世界選手権で2位。銀メダルという快挙を達成した。彼女の強さの源は「ジャンプの質」。来季はトリプルアクセルにも挑むという。
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力強いガッツポーズ。ポロポロこぼれ落ちた大粒の涙。得点を確認するとさらに号泣──。
3月にイタリア・ミラノで行われたフィギュアスケートの世界選手権で、樋口新葉(ひぐちわかば・17)がため込んできたパワーを一気に爆発させた。平昌五輪を制したロシアのアリーナ・ザギトワ(15)、日本女子のエース、宮原知子(みやはらさとこ・20)を抑えて銀メダル。
「濃い一年でした。グランプリファイナルに出たこと。五輪シーズンを戦ったこと。世界選手権のメダルは他の選手のミスもあって棚からぼた餅なので、来年は絶対に表彰台から落ちない選手になりたい」(樋口)
確かに、ザギトワがフリーで3度転倒。他の選手にもミスがあった。樋口が言う「棚からぼた餅」的な側面がないとは言わないが、樋口の演技は十分、銀メダルに値するものだった。
そもそも今季、樋口はザギトワに肉薄していた。2017年9月のロンバルディア杯では0.83点差の217.63点で2位。11月の中国杯でも1.36点差の212.52点で2位。
「(エフゲニア・)メドベージェワは本当に練習でも一回もミスしないけれど、ザギトワはミスもある」(樋口)
と言ってのけ、世界で唯一、ザギトワに苦手意識を感じていなかった。
そんな樋口の武器はジャンプの「加点」だ。世界選手権のフリーでは七つのジャンプの加点合計が7.21。優勝のケイトリン・オズモンド(22)は6.39、宮原は0.63だから、ジャンプの質が樋口の強みであることがはっきりわかる。特にダブルアクセルでは羽生結弦(はにゅうゆづる・23)のトリプルアクセルと同じ「カウンター」という難しい足さばきから跳ぶ工夫をしている。
シーズン前半はこの加点を武器に好成績を収めたが、12月の全日本選手権は公式練習中に右足首をねんざ。2枠しかなかった平昌五輪代表を逃した。