近畿大学学長で医師の塩崎均さんがAERAの表紙に登場。異色の経歴や、学長としての思いを聞いた。
志願者数は5年連続で日本一。近畿大学の快進撃は、この人が学長になってから始まった。
特に広告戦略は注目の的。「関関同立の下」というランク付けに「固定概念を、ぶっ壊す。」と異議を唱え、「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」と睨みを利かせる。今年は「志願者増で倍率が上昇したお詫び」「24時間利用可能な自習室で学生が頑張りすぎるのではと親を心配させたお詫び」など謝罪の体裁でPRした。
多弁な広告とは対照的に、リーダーの語り口は静かだ。総合大学の学長には珍しい外科医。特に食道がん治療では、咽頭を温存する手術法を世界に先駆けて確立した名医として知られる。しかし医学部附属病院長だった2005年、自身にステージ4の胃がんが発覚。一度は治療をあきらめたものの、「医師として最後に何かを残したい」という思いが湧き立ち、前例のない治療法にチャレンジした。
学長としての強烈な使命感はこの経験に根ざす。死の淵に立って感じたのは「生きることのまぶしさ」。大学時代は人生で最もまぶしい時期のはずなのに、偏差値という物差しにとらわれ、自信を失ったまま過ごす学生のなんと多いことか。
「本来、学歴とは学校歴ではなく、何を学んだか。受験生が本当に学びたいと思える大学をつくらなければならない」
近大マグロを食べさせる店を開き、産学連携によるユニークな商品を売り出し、ド派手な卒業式をするのも、学生たちが学ぶ喜びを知り、近大生であることを誇れるようにしたいという一心からだ。
エリートではなく、リーダーを育てたいが口癖。
「僕自身はみんなの3歩前を歩くのではなく、半歩前がちょうどいいタイプ。背中のうしろに、体温や声を感じていたい」
謙虚だからこそ、大胆な改革ができるのだ。(編集部・石臥薫子)
※AERA 2018年3月26日号