つまり、半数の世帯は、1000万円以上の蓄えがあるということになります。これで十分だと思えるかは人それぞれでしょうが、少なくとも「老後破産」を心配する必要はないでしょう。
さらに、内閣府が60歳以上の男女に現在の暮らし向きを聞いた調査では、こんな結果が出ています。
「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」20.1%
「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」54.0%
合わせると、約4分の3の人が心配なく暮らしていることがわかります。
この調査で興味深いのは、年齢が上がれば上がるほど、経済的な不安は少なくなる傾向があることです。
経済的な面で「不安と思っていることはない」と答えた60~64歳の男性は、23.6%でした。一方、これが80歳以上の男性になると、45.7%まで増加します。女性にも同じような傾向が見られます。
年をとればとるほど、経済的な不安が増えるようなイメージを抱きがちですが、じつは逆なのです。これぞまさしく「エイジングパラドックス」の典型例といえるでしょう。
メディアのネガティブな報道を真に受けて、自分もやがて「老後破産」するのではないか、「下流老人」になるのではないかと、過度に悲観しないでください。大切なのは、こうした統計的数字のようなデータにもとづいて、冷静に自分の頭で判断することです。
私はよく「感情より勘定」とお伝えしています。感情的になって、いいことは何もありません。
■「バラ色」すぎる報道にも問題がある
ネガティブな報道があふれる一方で、じつは逆の現象も起きています。
医師で小説家の久坂部羊さんは、著書『日本人の死に時』(幻冬舎新書)で、「メディアは老いの現実から目をそらし、『バラ色情報』ばかり流している」と批判しています。
久坂部さんは「バラ色情報」の例として、次のようなものを挙げています。