「老後破産」「下流老人」など、高齢者の将来には、何かとネガティブなイメージがついてまわります。でも、年をとればとるほど本当に生活は困窮していくのでしょうか? 金融関係機関の調査によると、70代・2人以上世帯の金融資産は、平均値で2209万円あるといいます。世間のイメージとは大きく違う「老後の実態」を、精神科医として30年以上高齢者医療の現場に携わる和田秀樹さんに解説してもらいました。(朝日新書『70代から「いいこと」ばかり起きる人』から一部抜粋しています)
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■「老後破産」「下流老人」はメディアの偏向報道
電通総研がまとめた「高齢者のライフスタイルと消費・働き方」によれば、高齢者は生活水準によって3つに分けることができるそうです。
(1)「生活困窮」高齢者 10~20%
少額の年金のみで生活。預金残高が少なく、社会的ネットワークも乏しい。病気、介護など、何か大ごとが生じた際に、社会的困窮層におちいる可能性がある。
(2)「普通生活」高齢者 70~80%
年金と金融資産の取り崩しで生活。生活はつつましやかだが、とくに苦しいというわけでもない。いざという際は、家族縁が支え。
(3)「富裕」高齢者 10~20%
年金、金融資産(配当など)、不動産所得、事業所得などで生活。社会的ネットワークなども豊富。
これを見ると、メディアでセンセーショナルに報道される「老後破産」「下流老人」のイメージは、一部を切り取ったものだということがよくわかります。
もちろん、「生活困窮」している高齢者が存在しているのは確かですし、そうした人たちを社会がきちんとフォローすべきなのは言うまでもありません。とりわけ、生活保護の受給ハードルは、早急に下げる必要があるでしょう。
一部インターネット上では生活保護バッシングが盛んのようですが、少なくともこれまで税金を払ってきた高齢者には、生活保護を受ける資格も権利もあります。偉そうに文句を言われる筋合いはありません。
いずれにしても、7~8割の人はふつうの暮らし、1~2割の人はそれ以上の豊かな暮らしをしています。むやみに不安がる必要はありませんし、仮に1~2割の「生活困窮」におちいってしまったときは、堂々と福祉を頼ればよいのです。福祉を頼ることは、決して恥ずかしいことではありません。
また、次のようなデータもあります。
金融広報中央委員会の最新調査によれば、70代・2人以上世帯の金融資産(=預貯金、株式、債券、投資信託など)は、平均値で2209万円、中央値でも1000万円だそうです。