※写真はイメージです
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 スマホやタブレットを使った学習では、脳の前頭前野があまり働いていない。小中学校に大量にスマホやタブレットが導入されている今、このような驚くべき事実が明らかにされた。「脳トレ」の川島隆太教授が長く所長を務めてきた東北大学加齢医学研究所助教の榊浩平氏が解説する。(朝日新書『スマホはどこまで脳を壊すか』から一部抜粋)

【グラフ】スマホを使っているときの脳はこう動いている

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■スマホが子どもたちの脳に与える影響

 パソコンやタブレット端末などのデジタル機器を用いた教育は、子どもたちの脳や学力へどのような影響を与えるのでしょうか?

 文科省の2021年7月時点における「端末利活用状況等の実態調査」によると、公立の小学校等の96.2%、中学校等の96.5%が、「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を開始しているとのことです。このように、すべての子どもたちへ「1人1台端末」がすでに行き届きつつあるのが現状です。

 みなさんは知らない言葉を調べるときには何を利用していますか?

 最近はスマホを使って、指先一つで簡単に情報を得られるようになりました。一方で、スマホで得た知識は頭に残らず、すぐに忘れてしまうような感覚を抱いている方も多いのではないでしょうか。

 そこで、私たちは実際に調べものをしているときの脳活動を計測し、スマホを使用した場合と紙の辞書を引いた場合で比較する実験を行ないました。東北大学の学生さんにご協力いただき、少し難しい単語(例えば「忖度(そんたく)」など)の意味を2分間でどれだけ調べられるかを、超小型NIRS(ニルス、脳活動を測る機器の一つ)を用いて前頭前野の脳活動を計測しながら実験しました。

 実験の結果、紙の辞書を引いた場合は2分間で五つの単語の意味を調べることができました。一方で、スマホを使用した場合は六つでした。この結果から、やはりスマホは手軽に情報を得られる便利な道具だといえます。

 では、肝心の脳の活動はどうなっていたでしょうか?[図]は、言葉調べをしているときの前頭前野の活動の変化を表しています。縦軸が「脳の活動の変化」、横軸が「時間」です。黒い線が「右の脳活動」、灰色の線が「左の脳活動」をそれぞれ表しています。

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スマホの操作は前頭前野を刺激しない?