「かつては、『妻は男に殴られたがっている』と雑誌上で知識人が語っていたり、宮尾登美子さんですら『女は皆、男に殴られて幸せ』といったことを語っていたりするんです」(酒井さん)
社会参画面での男女平等にまだ課題は多いとはいえ、過去に比べればだいぶ進歩はしたのか。
では、かつて女性が治めることが主流だった家庭は、これまでにない規模での男性の参加を得て、どう変わっているのか。
育児・教育ジャーナリストで、子育て中の夫や妻から多くの相談を受けてきた、おおたとしまささん(44)は言う。
「一時期から、『家事や育児に積極的に参加したいのに、妻が何もやらせてくれない』という男性の相談が急激に増えたんです。同時期に女性からの『夫が思い通りに動かない』という相談も増えました」
おおたさんは、「他人が思い通りに動かないのは当然」と指摘する。
家事の圧倒的なスキル差や、「わずかな家事でやった気になってドヤ顔をする」からではなく、妻が「思い通りに動かない」「自分のやり方と違う」という理由で、夫を排斥しているとしたら、これもある種の縄張り意識、既得権益といえるのでは。