


「ネットの高校」として昨年開校したN高等学校。将来の夢につながる学びができるカリキュラムに惹かれ、異才が集結し始めている。日本の教育に風穴を開けられるか。
10月半ばの日曜日。東京・築地の高層ビルの一室から発声練習が聞こえてきた。声の主はN高等学校(N高)の男女30人。11月3日の音楽祭に向けた練習だ。音楽祭といえばクラス対抗の合唱を想像してしまうが、通信制の同校生徒は1、2期生あわせて全国に約4300人。当然「対抗」は無理なので、有志で校歌を歌う。会場はなんと「さいたまスーパーアリーナ」。動画配信サイトのニコニコ動画(ニコ動)のユーザーが歌や踊りを披露する「ニコニコ超パーティー」のステージに立つのだ。
「1万5千人の観客を前に歌うなんて、普通の学校じゃありえないでしょう」
大阪から日帰りで駆けつけた女子生徒はそう声を弾ませた。
「ネットの高校」というキャッチフレーズから、仮想の高校と誤解されることもあるが、N高は学校教育法第1条に定められたれっきとした「高等学校」だ。ニコ動を擁するドワンゴと出版大手のKADOKAWAが経営統合してできた「カドカワ」が、インターネット時代の新しい通信制高校として昨春開校した。
同校の最大の特徴は、高卒資格向けの勉強以外の“空き時間のカリキュラム”にある。
●偏差値40台から70台も
高卒資格は、パソコンやスマホで映像授業を視聴して「確認テスト」を受け毎月ネットでリポートを提出。年5日程度、教室での対面授業を受ければ取れる。一方で空き時間には、プログラミングや語学、物語や音楽、ゲームの創作などの授業から好きなものを選べる。大学受験講座や中学の復習講座だってある。しかも教えるのはその道のプロたちだ。多くの授業はライブの双方向。もちろん挙手や質問もできる。
どんな生徒がいるのか。同校によると、通信制なので不登校経験者が半数以上だが、中学時代に生徒会や部活のリーダーだった子や、プログラミングコンテストで入賞し、IT企業でインターンとして働いている子など多士済々。学力も偏差値40近くから70超まで。通信制高校に10年以上勤めた経験があるN高校の奥平博一校長も驚いた。
「従来の通信制には『選ばざるを得なかったから来た』子が多かったですが、N高で目立つのは『自分からここを選んだ』という子です」