●リベラル票の取り合い

 公示後の東京都内。帰宅ラッシュのターミナル駅で、枝野氏の顔写真が入った立憲民主党のビラをまく中年男性(55)がいた。学生時代は日本共産党の青年組織「民青」(日本民主青年同盟)で活動していた筋金入りの共産党員。男性の選挙区では野党共闘の結果、共産党が候補者を取り下げた。党からの指示で立憲民主党のビラを配っているという。表情がさえないのは、世論調査の結果が理由だ。

「支持政党で共産党が思ったより伸びていないんです。希望の党はもとより、立憲民主党よりも低い。民進党が保守とリベラルに分裂したことで、当初、期待していたリベラルの比例票が、立憲民主党に流れてしまったんです」

 男性は、立憲民主党が短期間で63もの小選挙区に候補者を擁立することができたのは、全国で共産党が51選挙区の候補者を取り下げたからだと主張する。もっと感謝してもらいたいと語り、こう続けた。

「最初から政策がぶれていないのは共産党だけですよ。枝野さんも憲法9条改憲派なので信用ならない」

「枝野さんは改憲派」は、13年、枝野氏本人が「文藝春秋」誌上で発表した「改憲私案」を指す。確かに枝野氏は集団的自衛権については、憲法解釈の見直しによる行使容認は許されないとする一方、9条には新たな規定を加え、国際法規に基づき我が国の安全を守るために活動している他国の部隊への武力攻撃には「必要最小限の範囲内で、当該他国と共同して自衛権を行使することができる」と明文化している。「現行憲法には指一本触れない」という共産党とは立場が異なる。

●「左傾化」と言われて

「野党共闘」で各党が気にするのは、共産党との関係だ。安倍政権に対抗するという大義は同じでも、共産党と共闘すると「アカ」のレッテルを貼られる。共産党と同一視されることで無党派層の票田を逃す、と。福山氏の「右でも左でもなくど真ん中」という発言は、共産党も意識したものと考えられる。

 希望との合流を決断した前原氏もこうツイートしている。

「我が党は他の野党との4党共闘を優先する余り、政策的立ち位置が曖昧になってしまいました。『民進党は左傾化し、共産党や社民党との違いが分からなくなった』と指摘される度に、私は忸怩(じくじ)たる思いに、さいなまれました」(10月6日)

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